研究課題/領域番号 |
15K04492
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
柳沼 良太 岐阜大学, 教育学研究科, 准教授 (30329049)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 道徳授業 / 問題解決的な学習 / 体験的な学習 / 深い学び / 主体的な学び / 対話的な学び / 考え議論する道徳 / プラグマティズム |
研究実績の概要 |
平成30年度は、小学校と中学校での道徳授業を中心にして問題解決的な学習や体験的な学習を用いた道徳授業の指導法と評価法を開発・実践して研究成果を発表することができた。特に研究協力校の筑波大学附属小学校および岐阜大学教育学部付属小・中学校、岐阜県内外の先進的な道徳授業の実践を指導訪問した上で、問題解決的な道徳学習の学習指導過程について詳しく探究し、その研究成果を論文や著書として発表することができた。 具体的な研究実績として、問題解決的な学習の発問とその授業展開を検討して『「問題解決的な学習」をつくるキー発問50』を刊行した。また、筑波大学附属小学校及び岐阜大学附属小中学校の先生方と協力して、現代的な課題に取り組む道徳授業の研究成果を刊行した。この研究では、価値判断力・意思決定力を育成する社会科と道徳科のコラボレーションを図ったもので、平成30年8月に研究発表会を行った。中学校では、東京都をはじめ、岐阜県や愛知県などと協働して問題解決的な道徳授業を開発・実践し、その成果を刊行した。この他、道徳科の評価に関する研究として編著で『道徳の評価』を刊行した。こうした道徳教育の理論的・歴史的な考察として『プラグマティズム、公共、道徳』も刊行している。 また、こうした研究成果を学会で発表したものとしては、以下のものがある。日本道徳教育学会では「人生の目的に対応した道徳授業の指導と評価」を発表した。日本道徳教育方法学会の課題研究では、「考え議論する道徳をどのように行うか」を発表した。国際学会としてはAssociation for Moral Educationにおいて“Moral Teaching Method Corresponding to Life's Purpose”と題して発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
小学校だけでなく中学校においても道徳科における問題解決的な学習と体験的な学習のあり方を検討し、実際にその理論に基づいた授業実践を開発・実践して、当初の計画以上の研究成果を発表し刊行することができた。具体的には、上述した「研究実績の概要」に示した通り、研究成果を著書、論文、学会発表など多方面で示すことができた。 計画の当初では、今年度は中学校の道徳授業を中心に行う予定であったが、前年度より継続して小学校の道徳授業も行うことで、相乗効果を発揮することができた。筑波大学附属小学校や岐阜大学教育学部附属小学校・中学校をはじめ、多くの小・中学校で道徳の授業実践を行い、研究協議会を行うことで、その量的・質的な充実を図ることができた。また、相互の研究内容を活用・応用する形で、現代的な課題(情報モラルや環境倫理など)に対応した発展的な研究にも取り組めている。 また、海外の道徳教育との比較研究も継続して行うことができた。我が国の道徳授業は国内で閉鎖しており発展性や実効性に乏しいが、諸外国の道徳教育と比較検討することで国内の道徳授業実践に刺激を与えることができている。 特に、デューイのプラグマティズムを活用した問題解決的な道徳学習を開発して、諸外国の道徳教育と比較検討することで、根本理論とその実践的応用の在り方も提示することができた。その成果を当初の計画より1年前倒しでまとめ、『プラグマティズム、公共、道徳』という研究書で刊行することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究においては、小学校と中学校の研究協力校を中心に、問題解決的な学習や体験的な学習を用いた道徳授業の指導法と評価法を開発・実践しているが、それらの研究成果を全国の学校現場に報告して普及させることは十分にできていない。今後はこうした研究成果をいかに全国の小・中学校や教育委員会等に紹介・説明していくかが課題となる。 我が国の道徳授業は、古くから登場人物の心情を読みとる形式が固定化しているため、本研究で取り扱っている「考え議論する道徳」や問題解決的な学習等を活用した道徳授業を理解してもらうには、まだ時間がかかると思われる。 また、問題解決的な学習や体験的な学習を用いた道徳授業のやり方は、学校現場の教師の方でも、慣れやテクニックの習得が必要であるため、熟達するためには時間をかけて丁寧に伝える必要がある。 来年度は最終年度となるため、できるだけ学校現場の指導訪問回数を増やし、研究授業や研修会等で直接指導をしたり、メール等で授業事前に間接指導したりして、教師の実践的な指導力を高めるよう努めたい。来年度も引き続き研究成果を論文や書籍や学会発表などで積極的に報告することで、学校現場の授業実践をサポートできるようにしたい。 さらに、道徳科における問題解決的な学習だけでなく体験的な学習の改善・充実にも力を入れ、単なる役割演技や動作化ではない豊かな体験型の道徳授業を開発・実践したいと考える。そのために、引き続き筑波大学附属小学校や岐阜大学附属小・中学校では創造的・挑戦的な研究開発に取り組む。
|