最終年度の計画は、 (1)前年度同様の事例収集、(2)収集した記述データと行動履歴データの分析、(3)簡易自然言語処理を用いた応答システムのプロトタイプ作成を行うことであった。(1)(2)は前年度までと同様のため割愛し(3)について詳しく述べる。 本研究のトレーニング法における最大のポイントは「一定の解釈・評価基準を持ち、記述漏れを勝手に補わない」「多義的解釈可能な記述に対して、相手の意図をはずすことのできる」賢いペア相手を用意することであることが、前年度までの研究によってわかっていた。また、これまでの事例収集から、「誤り易い箇所」「誤読され易い表現」についても多くの事例と分類ができていた。これらのことから、本格的な自然言語処理を行わずとも、単語列のパターンマッチングの範囲内で、記述内容を解釈して形状を描画できるシステムを開発できそうだという感触を得た。 これを可能とするシステムのプロトタイプを開発した。本システムは、画面上に編集領域と描画領域を並べて表示している。学習者は、編集領域に「本」の字を書く手順を記述し「Start」ボタンを押す。システムはその記述を解釈して描画領域に線画を描く。学習者はその描画の様子を見て編集領域を修正し、「Reset」「Start」ボタンによって再描画させる。これを繰り返して記述を精密にしてゆく。内部処理としては、編集領域の記述を形態素解析し、単語によるパターンマッチングを用いて線の開始点、方向、長さ等を決定し、描画するものである。 本プロトタイプシステムを学部1年生の希望者に試用してもらい、使用感調査ならびに改善点の抽出を行った。試用時のログから、記述の特長とプログラミング作業との間の相関についても調査してみたところ、「本」の字に含まれるある2つの画の関係をうまく記述できるか否かと、elseif文の使い方との間に特徴的な関係性が見られた。
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