研究課題/領域番号 |
15K04501
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺内 大輔 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60613891)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲームピース / 教材/学習材 / ストレングス視点 / コブラ / ジョン・ゾーン / 作品概念 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,アメリカの作曲家ジョン・ゾーン(John Zorn)が考案した集団即興演奏のための方法が作品化された《コブラ(Cobra)》の構造を手がかりとして,小学校音楽科における,児童一人ひとりの持つ表現の多様性を活かすことのできる即興的表現活動のための新たな教材を開発することである。 初年度となる平成27年度は,まず,理論的基盤を確かなものにするため,《コブラ》の演奏方法,音楽作品としての存立要素,パフォーマンスにおける奏者間のコミュニケーションの特質を考察した。その成果は,日本音楽即興学会の学会誌に論文として発表した他,日本音楽表現学会の大会において口頭発表を行った。また,《コブラ》と似た構造を持った集団即興演奏の方法であるローレンス・D・ブッチ・モリス(Lawrence D. "BUTCH" Morris)の《コンダクション(Conduction)》との比較も行い,日本音楽即興学会の大会において口頭発表を行った(橋本知久との共同発表)。 実践的研究については,広島市内の公立小学校で行われた授業実践(《コブラ》の構造を活かした即興演奏活動)について,学級担任へのインタビューを行いながら振り返り,児童一人ひとりにとっての意義を考察し,日本音楽教育学会の大会において口頭発表を行った。さらに,音楽祭「Creative Music Festival 2015」では,参加者とともに《コブラ》のルールを改変していくというワークショップを企画し,講師も務めた。同音楽祭のコンサートでは,ワークショップの成果を演奏によって一般に公開した。 以上の成果をもとに,教材《ステージ(Stage)》を開発した。本教材は,即興的な要素はあまり含まれていないが,児童一人ひとりの持つ表現の多様性を活かすことのできるものである。意義の検証を目的とした実践は,平成28年度以降に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,《コブラ》の構造上の特質や演奏結果の特徴について,理論的・実践的に分析することを中心とした研究を行い,それらの成果を,3度の学会発表と3本の論文によって発表した。これらの研究成果は,新たな教材《ステージ》の開発の基盤となった。関連資料の調査も,おおむね順調である。《コブラ》の演奏実践も,音楽祭「Creative Music Festival 2015」のワークショップとコンサートにおいて行うことができた。同音楽祭では,ワークショップの様子を録画したほか,参加者を対象としたアンケートを実施した。これらは,今後の教材開発や実践に活かす予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は次の3つである。 1. 《コブラ》の構造上の特質や演奏結果の特徴に関する理論的・実践的研究は,これまで同様継続する。その成果は,論文・口頭発表などによって,学会・紀要等において発表する。 2. 《ステージ》の実践を積極的に行う。平成28年6月に予定されている日本音楽表現学会におけるワークショップでの実践を予定している。学校現場における実践の機会を得るため,現在,数名の小学校教員との連絡調整を進めている。 3. 新たな教材の開発に取り組む。成果を,平成28年11月に予定されている日本音楽即興学会で発表することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は,物品費として200,000円,旅費として300,000円,謝金として200,000円,その他として0円,合計700,000円の使用を計画していた。物品費については,購入した書籍や録音資料が予定よりも少なく,また論文のダウンロードもすべて無料のものだったため,予定していた金額のおよそ半分の使用に留まった。旅費は,当初予定していたニューヨークにおける調査を取りやめたものの,学協会での発表の他,音楽祭や学会ゼミナール,講演会への参加,コンサートの鑑賞を行った結果,予定を大幅に上回る支出となった。謝金としては,資料の整理のための支出があったが,予定していた「専門家からの専門的知識の提供」を受ける機会がなかったため,予定よりも少額に留まった。結果,合計583,515円の支出となり,計画よりも116,485円少ない金額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として,研究に関わる書籍,録音資料の購入,論文のダウンロード,関連するゲーム的教材の購入等に使用する予定である。旅費として,情報収集,授業実践,ワークショップ実践,研究成果の発表,演奏にかかる旅費に使用する予定である。謝金は,授業実践・ワークショップ実践等の録画,授業実践・ワークショップ実践等の参加者を対象としたアンケートから得られるデータの整理,資料の整理,教材開発のための専門的技術の供与等に係る謝金にあてる予定である。その他,学会の大会参加費等の使用も予定している。
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