インドネシア小中社会科および公民科のほとんどの教科書は,社会科では歴史,地理,社会,経済別,公民科では道徳,憲法・法律,政治等の領域別的章構成を採用している。ただし,社会科も公民科も,小学校1・2年生においてはそれらの領域別ではなく,家庭や近隣環境における構成員の権利,規範や規則の遵守,違いを尊重した協力・民主的な話し合いが,章構成の観点である。小学校社会科は,1・2年生では家庭,3年生では地域の環境と仕事,4年生では天然資源・経済,5年生ではインドネシアの歴史,6年生では近隣諸国との関係が主な内容選択の観点である。小学校公民科は,1・2・3年生では家庭・近隣環境等における個人の行動,4・5・6年生では村から国家までの行政・政治が内容選択の観点である。社会科でも公民科でも,家庭から地域,国,世界へという同心円的拡大原理が採用されている。中学校社会科は,全ての学年で地理的,歴史的,社会的,経済的内容を学ぶ。領域別に見ると,地理は主に自然地理,歴史は古代から現代へと全体的に学び,社会は社会化から社会的逸脱と社会制度を経て社会文化の変化,経済は経済行動から市場・経済制度を経て金融・貿易へと,原理から制度を経て実践的内容を学ぶ配列である。中学校公民科は,やはり学年に特定の領域を割り振るのではなく,全ての学年で,憲法・法,政治制度,外交を学ぶ構成となっている。領域別に見ると,憲法・法の基本的考え方から実際の憲法・法・政治制度,そして外交や住民参加へと進む,原理から制度を経て実践的内容を学ぶ配列である。日本の社会科・道徳と比較すると,インドネシアでは道徳的内容は小学校1・2年生社会科・公民科で取り扱い,それ以降の学年では,地理的,歴史的,社会的,経済的,法的,政治的内容を,同心円的拡大的配列および原理・制度・実践順での配列で扱い,2教科で役割分担しながら総合的社会認識を積み上げている。
|