本研究の目的は、いじめの未然防止と早期解決に向けた具体的方策として「子ども主体のいじめ防止・解決プログラム」の開発研究であった。2年間の教材開発の後、3年目は、開発した教材を5段階に系統的に配列し、教材観、指導の展開や授業の手法等も入れて、プログラム全体の解説書を一冊の本にまとめ、刊行した。教材そのものは、デジタルコンテンツなので、ダウンロードして、電子黒板やプロジェクターを使って授業ができるようにパワーポイントで作成している。 このプログラムの特徴は、いじめの被害者・加害者だけでなく、周囲の傍観者の行動変容に着目しているところである。何がいじめなのか、子どもたちが考える手法を取り入れている。また、加害者の心理や被害者の心理を深く考えさせることや、四層構造や法の知識を学ぶことも取り入れている。人権侵害のケースと同様、被害者が自分を責めることのないよう、傍観者の行動がキーになり、被害者が強く立ち上がることで集団の構造変容になることを理論的に整理した。最後の段階では、アサーショントレーニングを取り入れ、自分がいじめの場面に遭遇したらどのように対応すれば効果的であるのか、セリフを考え、ロールプレイする。これまでの子どもたちの意識調査を生かし、随所にそのデータ結果も踏まえて作られている。キャラクターが登場する設定なので、楽しく学べる。道徳の補助教材として、ICT教育、アクティブ・ラーニングとして、学校で活用できるプログラムである。 また、本年度は、フィンランドに海外視察に出かけ、いじめ防止プログラムであるキヴァプログラムの授業を小中学校で観察した。日本で開発したプログラムとの共通点も多いが、基盤となる学校環境の充実や教員の人権意識の高さに驚嘆させられた。いじめ防止だけではなく、人権教育が必要であることが明らかになった。この点については、引き続き、今後の研究課題である。
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