研究課題/領域番号 |
15K04508
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
中井 賢一 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (90580960)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本古典文学 / 教材開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「学習者の多読を促進できる教材の不足が『古典ばなれ』の一因である」との認識のもと、学習者が自身を重ね合わせやすい(=心的距離の近い)物語、且つ、学習者が生き方の規範にしやすい(=成長へのモデルとなりうる)物語を集成したリーディング教材を、高校・高専現場向けに作成し、古文の多読を促す指導環境を整備することにある。即ち、本研究の最終目標は、学習者自らが、自身の「地方」の特徴・魅力に目を向け、様々な地理的「環境」や人的「環境」との〈共生〉に思いを致せるような〈地域環境と共生する子ども物語〉を、新資料を併せ出来る限り多く教材化し、有効性を臨床教育学の見地から検証した上で、現場向けに公開できる体制を整えることである。 そのため、研究期間の1年目にあたる本年度は、奈良期の記紀神話(本研究では「物語」と見做す)と平安期の物語について、上記目的に沿って「資料の収集」、「当該場面の抽出」、「具体的な教材化」の順で作業を進めた。 結果、平安期作品の「資料の収集」、「当該場面の抽出」、「具体的な教材化」は概ね仕上った。奈良期作品については「資料の収集」までがほぼ実施済みである。継続的に、「当該場面の抽出」、「具体的な教材化」を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の本年度計画においては、平安期作品、奈良期作品とも、「資料の収集」、「当該場面の抽出」、「具体的な教材化」まで進行する予定であった。 平安期作品においては、プレスタディが進んでいたこともあり、順調に計画を消化できたが、奈良期作品については、「当該場面の抽出」が想像以上に困難であり、「具体的な教材化」にまで及ばなかった。 今後、鋭意努力するが、とは言え、拙速に陥らないよう留意しつつ作業することを優先したい。
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今後の研究の推進方策 |
二年目となる平成28年度は、鎌倉・室町期の物語作品を対象に「資料の収集」、「当該場面の抽出」、「具体的な教材化」を行う。 「資料の収集」については、概ね27年度と同様に進める。鎌倉・室町期の物語には〈地域環境と共生する子ども物語〉が多数含まれている。にもかかわらず、従来の教材では十分に採用されていない現状だけに、できる限り多くの場面を網羅するよう努める。ただし、この時代には本文価値の評価が玉石混淆の作品も多くあるため、期間の前半は資料収集に、そして後半は収集資料の内容と教材価値の吟味に、それぞれ特に力を入れることとする。 「具体的な教材化」についても前年度同様に進める。なお、鎌倉・室町期の物語といえば、検定教科書では軍記物語が採用されることが多いが、子どもが死や戦と関わるストーリーは、教育的見地からできる限り避けたいと考えている。 最終年度となる平成29年度は、これまで蓄積してきた成果の再検証を行い、「具体的な教材」として編集した上で、公開できるようにする。 本格的に教材編集を行うため、高校や高専の古文教材として適切であるか否か、教育学的見地からの再検証も必要になる。検定教科書に掲載されにくい作品を多く取り上げるからこそ、重専門的知見の提供を受けながら、慎重に作業を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究成果を投稿した雑誌が投稿料を必要としなかったこと、及び専門的知見の提供を受ける際に謝金の固持があったこと等により、当初計画より余剰金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究に際しては、「資料の収集」と「当該場面の抽出」にかかる書籍により多く予算を配当したのであるが、その分、「具体的な教材化」にかかる参考図書の設備がやや手薄になっている。 次年度においても、これらに関する予算申請は行ってはいるが、本年度不十分だった設備を補いきれないと思われるため、ここに併せ充当することで、作業の効率化を図る予定である。
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