本研究の目的は、学習者にとって心的距離の近い物語、且つ成長へのモデルとなりうる物語で古文の多読用リーディング教材を編集し、主として高校・高専現場に発信することにある。都とは異なった厳しい地理的「環境」・人的「環境」と〈共生〉しつつ逞しく生きる子どもの物語、即ち〈地域環境と共生する子ども物語〉を、活字化されていない新資料も含め、様々な時代から出来る限り多く集成し、「テキスト」・「注釈」・「指導案の例」から成る教材を作成を目標に3年間の研究期間を充てている。 本研究の最終年度となる平成29年度は、これまで蓄積してきた本文資料や周辺資料等の再検証を行い、具体的な「教材」として編集した上で、公開できるよう努めた。 本年度は、本格的に教材編集を行うため、資料の収集やその選択以上に、教材としての有用性を判定する作業に注力した。特に鎌倉・室町期物語については、高校の古文教材として適切であるか否か、教育学的見地からの再検証も必要になる。検定教科書に掲載されにくい作品を敢えて多く取り上げるからこそ、重要なステップであると考え、専門的知見の提供を受けながら、慎重にその適性について再検証することとした。また、教材編集の際、新資料の掲載については、規定に則り、資料所蔵者・機関等に確実に承認を受けるよう留意した。 成果は、報告書や各種論文等における発表を中心に行った。ホームページ上での公開も計画しているが、条件整備上の関係で遅滞している現状である。また、作成教材は、「テキスト」篇・「注釈」篇・「指導案の例」篇に分け、教育現場へのフィードバックに努めた。また、本年度末に、研究成果報告書として取りまとめた。冊子媒体のみならず、データでの配布も実施している。
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