研究課題/領域番号 |
15K04510
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
加藤 卓 東京福祉大学, 教育学部, 講師 (10709140)
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研究分担者 |
守屋 誠司 玉川大学, 教育学部, 教授 (00210196)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 射影量 / 割合 / 速さ / 記述力 / 論述力 / 教育課程 / 教育内容 / 国際教育比較調査 |
研究実績の概要 |
数直線を用いた現在の指導と比較し,数量関係図を用いるという指導の優位性が不明確であったため,現行教科書の問題をそのままに数量関係図を用い,記述力も同時に高められるワークブックを作成した。作成したワークブックを使用して,4・5年生各1名への予備実験を行った結果,数直線よりも数量関係図を用いて指導した方がより高い到達度となることが確かめられた。また,予備実験の反省に基づきワークブックの改善を行った。 予備実験の成果をもとに,山梨県内の小学校6学年普通学級を対象に割合の復習として授業実践を行った。授業実践の結果,割合についての到達度と共にB問題の記述式問題でも正答率を大幅に向上できることを確認した。予備調査と授業実践による調査・研究により,現行の教育課程・教育内容では,数直線よりも数量関係図を使用して指導する方が効果的であることを明確にすることができた。 ドイツにおける実際の教育手法についての調査は,カールスルーエ教育大学のH教授の協力を得てバーデン・ヴュルテンベルク州にて,エアランゲン=ニュルンベルク・フリードリヒ・アレクサンダー大学のW教授の協力を得てバイエルン州にて実施し,ドイツにおける射影量に関する教育課程・教育内容・教室で行われている実際の教育手法を明らかにした。また,教科書等の教育資料収集については,教科書改訂期間に当たりG5・G6の教科書まで改訂出版された教科書がほとんどであった。そこで,G5~G8まで改訂が進んでいるバーデン・ヴュルテンベルク州の教科書を中心に収集した。さらに,日本での予備実験までの研究成果をGDM 2016 (Heidelberg,Germany) にて発表した。 以上の調査・研究を踏まえ,射影量に関する教育カリキュラムの修正に関しては,ドイツとの比較を通し,日本の教育内容が複雑・高度で,教育課程も早期に実施されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画で当初予定していた教諭2名が平成27年度当初の教職員人事で異動したため,調査研究を依頼し難い状況となった。そのため,日本国内においての文章題の演算構造による児童・生徒の解決過程に現れる難易度の実態調査,およびプロトコル分析については,全ての準備は整っているものの,未実施である。 平成27年度に実施した第1回のドイツの調査では,GDM 2016で学会発表を行うことができたが,ドイツ南部の2つの大学教授の援助を得られたもののバーデン・ヴュルテンベルク州とバイエルン州の調査・研究にとどまった。そのため,ドイツ北部シュテークリッツ=ツェーレンドルフ区・ブランデンブルク州の追加調査が必要になった。 加えて,ドイツでは現在,教科書の改訂期間であるため,教科書等の教育資料は,一度に実施できず,年度毎に追加購入しなければならない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
日本国内におけるの文章題の演算構造による児童・生徒の解決過程に現れる難易度の実態調査,およびプロトコル分析については,山梨県の小学校での実証成果をもとに,山形県酒田市のT小学校に調査研究を依頼済みであり,今年度前半に実施して当初の研究計画に追いつくことができる。 ドイツ北部シュテークリッツ=ツェーレンドルフ区・ブランデンブルク州の追加調査と,教科書の改訂期に合わせた教科書等の教育資料の追加購入については,未執行の予算をもとに,平成28年度の追加視察調査・文献収集を行う予定である。と同時に,ハンブルクでの13th ICMEにて学会発表を行う。 昨年度は,時間的な制約のために研究者間の情報交換がしにくい環境にあったが,今年度は昨年度に比べ,連携できる環境が整っている。 これらの推進方策により,日本の新たな教育内容・教育課程については,整理統合を含めて検討を加え,平成28年度後半に実施予定の射影量に関する教育実験を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国民の税金で賄われている研究助成金であるため,申請者が時間と労力を惜しまず,また,研修と工夫を重ねて倹約し,大切に使用させて頂いたためである。 また,ドイツでは教科書の改訂年に当たっているため,改訂された最新版の教科書を購入するために,ドイツの教科書等の教育資料に計上していた予算の一部を執行しなかったためである。また,日本国内での調査について予定回数分を実施できず,旅費・謝礼として計上していた予算を執行しなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の教職員人事異動の結果後を踏まえた上で調査を依頼し,遅れていた国内での調査研究については,酒田市のT小学校での調査の確約を得たので,国内での調査研究のための旅費として予算を執行する。 また,ドイツ北部シュテークリッツ=ツェーレンドルフ区・ブランデンブルク州の追加調査とともに,教科書等の教育資料の追加購入と13th ICMEの学会参加・発表費用として予算を執行する計画である。
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