国外では,平成29年度に実施した速さの記述式問題の到達度を向上させるために,ボックス図を使用してデータを整理し,ワークシートを使用して記述力を高める指導方法をGDM2019にて学会発表を行った。比較できる日本での全国的なデータはないものの,到達度は割合の到達度よりも高く,ボックス図の使用と記述力を育成するワークシートが問題解決の能力と記述能力の改善に有効であるという結論に至るのが自然であることを報告した。 国内での研究では,平成29年度に学習した「割合」についての数量関係図を使用した解決方略や記述力が,学習後の経過によってどの程度有効であるかについて調査した結果をまとめ,9月の学会で発表を行った。学習後の経過により,文章問題については,大半の児童が,学習した図の記載や第Ⅱ用法での立式を省略する傾向が強く,正答率が低下すること。反面,学習経過後において第Ⅱ用法の問題の正答率は他の用法より高く,問題解決力の保持に有利であること。記述式問題での記述力は,学習経過後も比較的到達度を高く保つことができ,記述力育成に配慮したワークシートの使用は有効である。児童は図をかくことや有用な立式方法を省略する傾向が強く,臨機応変に対応する力の育成は容易でないこと,等を明らかにした。 現行学習指導要領に則り,指導方法やワークシートの使用を十分に工夫した結果,文章題での学習直後の到達度は高めることができるものの,学習後に時間が経過すると忘却率が高いこと。また,欧米に比較すれば日本では早期に実施されていることから,射影量に関する教育は,適時性について慎重に考慮する必要があることを指摘した。 さらに,これまで4年間行った射影量に関する研究の成果を,『小学校指導法 算数(改訂版)第9章』,玉川大学出版部,2019年9月発刊予定の原稿にまとめ,教員養成や教員の再学習用のテキストとして使用できるようにした。
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