研究課題/領域番号 |
15K04512
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
長濱 博文 目白大学, 人間学部, 准教授 (00432831)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域的ナラティヴ / ナラティヴ・アプローチ / 自己肯定感 / 国際・地域間比較 / 持続可能な開発のための教育 / 道徳教育 / 防災教育 / 環境教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、価値多元社会における普遍的価値教授を通して、特に、震災(自然災害含)や紛争を経験した地域において、その学習効果による伝統的価値の活性化による地域の連帯や学校教育や家庭との連携による肯定的影響、特に児童・生徒の自己肯定感の涵養への肯定的影響について実証的に比較分析することを目的としている。社会の多様性と道徳教育の伝統に着目し、対象国をフィリピン、日本とする。道徳だけでなく、教科連携を分析する上で国際理解教育を含む社会科との関係について特に着目し、普遍的価値がどのコンテキストを経て伝統的価値の活性化に影響を与えているについて、教材、指導案の作成、教育内容、教授法の比較分析を行うことを本年度から実施することを予定している。最終的に、この分析を踏まえて、日本社会に即した新たな道徳教育の教授法の開発を目指す。 本年度の研究では、震災、災害を受けた比較対象地域の日本(東北)とフィリピン(マニラ、ビサヤ諸島)の調査訪問を行うために、日本に関しては、岩手県釜石市の教育委員会、幼稚園、小学校を訪問した。フィリピンに関しては、これまで訪問経験がないビサヤ諸島の状況と調査地に関係を持つ研究者、教育者の先生方との交流機会を得るために、フィリピンで行われた国際会議とビサヤ諸島に分校を持つフィリピン師範大学と公立諸学校を調査訪問した。次年度はこれらの実績を基に、連携協力者の先生方と訪問調査、意識調査の内容について検討し、実際の被災地だった地域の諸学校からの承諾を得て、現地調査を実施する。また、東北、フィリピン被災の状況により、子ども達、教員の意識の変化が大きく、調査内容の接点、共通項が正しいかどうかの確認について、各調査の終了ごとに、現地の調査協力者と連携していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本、フィリピンにおいても、震災で被災した地域や紛争を経験した地域は広範囲にわたり、どの範囲を、どのような観点で、何を基準で比較研究するかについて再度、考察することが必要であることが明確になったため。 また、日本の被災地を訪問して理解できたことは、一言で東日本大震災とまとめて言われるが、その影響は地域において極めて多様であり、現在おかれている人々の状況も考え方も、置かれている地域の状況や学校の現状も簡単に類型化できるものではないこと、一つ一つの地域社会を対象に、それぞれの地域をより丁寧に分析していかなければならないと理解できた為。
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今後の研究の推進方策 |
日本の東北地域の学校訪問では、各地の教育委員会と連携し、調査及び参与観察などに協力して下さる学校を探す。また、独自の防災教育、環境教育を推進している学校に連絡を取り、実施状況について、ここでも参与観察させてもらう。 日本での調査を基に、フィリピンでの調査方法について再考する。そして、児童・生徒の自己肯定感を高める比較の分析点と考えていた、こころの教育活動である道徳が唯一の比較の論点であるかどうか、それ以外にも自己肯定感を高める取り組みがなされていないかを考察する。 その上で、二国間の比較調査の有効性が高まる調査方法について、当初の量的分析法の整合性も含めて考察し、アンケート調査の準備に入る。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、調査地の状況調査、本調査地の選定、調査内容の再検討、及び調査に求められる予備的知識(調査地〔国内の東北地域及び国外のフィリピンの被災地域について〕)と分析方法の検討が主題であり、次年度からの本調査の準備段階として位置づけられていた。本年度は、国際比較を実施する上で、調査地の状況、調査法の選定について、専門家の意見を取り入れる等、より慎重に準備しなければならないことが理解できた。よって、初年度で購入予定であった量的分析に必要なソフトなどの購入は次年度以降に行い、より適切な調査分析が可能になるように予備知識と現地調査に時間を費やした。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、昨年度の予備的調査と準備を踏まえて、更に本調査を実施する地域の選定に入る。日本の東北地域とフィリピンの台風被災地との比較ということで、同じ被災地ではあるが、災害後の取り組みに大きな違いがあり、また公教育においても、それらをどのように教授するかについて、まだ明確な指針が示されていない地域もあることも理解できたことにより、単純な比較調査では、震災後の子ども達を涵養する教育の在り方を分析する目的を明らかにできないと考えている。地道な現地調査である授業の参与観察とインタビュー調査を継続し、共通項を見出した上で、現地調査の成果を踏まえた量的分析も加えた比較分析の実施を目指す。
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