研究課題/領域番号 |
15K04520
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研究機関 | 金城大学 |
研究代表者 |
木林 勉 金城大学, 保健医療学部, 教授 (30512397)
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研究分担者 |
越納 美和 金城大学, 看護学部, 助手 (80512483)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 介護予防支援者養成教育プログラム / 高齢者と大学生の協働学修 / 人的地域資源 / 能動的行動教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、地域の介護予防支援活動を活性化させるというニーズと、その指導者を育成するという大学の教育的ニーズを結びつけることを目的としている。介護予防支援活動による地域活性化を目的に、高齢者の力(成熟した指導力、豊富な知識や経験・技術、特技、文化的存在感など)を活用し、理学・作業療法学科生(学生)がプログラムを企画・立案する。さらに地域での実践方法および活動計画の作成、達成度評価までを組み込み、その構成や内容を検証する。これらのプロセスで学生と高齢者が自分はどうなりたいか、生活している地域がどうなればよいかを考えることで、介護予防支援活動の一翼を担う人材を養成する。 今年度は、先行研究や応募者がこれまで取り組んできた研究成果を踏まえ、高齢者の持つ力が活かされている活動についてプレテストを踏まえ質問紙票を含む調査票を作成した。調査票の完成後、本学の介護予防事業「悠遊健康サークル」の修了者200人および地元自治体の養成した介護予防リーダー100人の計300人に対し、アンケート調査を実施し、171人の回答(回収率57.0%)を得た。現在、活動内容で分類した有償活動、家庭内無償活動、家庭外無償活動とその内容、過去1年間の頻度を独立変数、社会の活動による利益としてもたらされる生活満足度と主観的健康観の2指標を従属変数、基本属性や社会関係をコントロール変数として多変量解析を行うためにデータの入力・集計を行っている。 また、高齢者と学生の協働学修からなる3段階のプログラムのうち、基礎研修プログラムの開発を進行中である。成熟した指導力や豊富な知識経験・技術、特技、文化的存在感などを持つ高齢者の人的地域資源と、柔軟な発想力や行動力を持つ大学生が融合した環境を作り、主体的な企画能力を高め、自由な発想と双方の活発な討論の中で、効果的な介護予防支援活動の実現に向けたプログラムを設計中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画に合わせ質問紙票の作成とアンケート調査を実施した。質問紙票の作成には、プリコード回答法と自由回答法を組み合わせた質問項目の精査を図り、プレテストを踏まえ信頼性と妥当性を検証した。アンケート調査は、現状把握を目的に、質問紙票に基本調査票を加え、300人の地域高齢者を対象に郵送調査法を実施した。対象者は、本学の介護予防事業「悠遊健康サークル」の修了者と地元公民館で主体的取り組んでいる介護予防教室の参加者とし、171人の回答(回収率57.0%)を得た。 3段階構成となっている研修のうちの最初の基礎研修プログラムの開発については、介護予防をけん引している高齢者やゼミ生を中心に意見を求め(協働学修)、①介護予防の理念、考え方の整理、②高齢者の身体について(運動・栄養・口腔ケアなど)、③高齢者の生活健康教育のテーマの選定や方法、④行動変容についての素案と到達目標、それを評価するルーブリックについてまとめる。次の実践研修プログラムの開発には、本学の介護予防事業「悠遊健康サークル」に参加し支援方法や関わり方について検討する。コミュニケーションやマナーやモラルをはじめ事業の運営の仕方や行動変容を獲得するための実践方法を検討する。 プログラムの3段階目の地域研修プログラムの開発においては、閉じこもり高齢者へのかかわりについて、地域の高齢者も大学生もそれについての見識が薄く、実情も把握できていないため、地元自治体に情報や資料の提供などの協力を仰ぐ予定である。また、地域主体の通いの場の把握や地域資源とネットワークについてもサービスのフォーマル、インフォーマルを分け隔てなく議論をしていくために地元自治体(高齢介護課や包括支援センター職員)にも参加していただく。
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今後の研究の推進方策 |
アンケート結果については、今年度前半にデータの整理後、速やかに統計解析を行う。 28年度は、次のように進める。プログラムの素案は完成しているので、現在はアンケート結果を参考にプログラム開発にかかる協働学修者の選定(高齢者20人、学生20人)を行っている。基礎研修プログラム;①介護予防の理念、考え方の整理、②高齢者の身体について(運動・栄養・口腔ケアなど)、③高齢者の生活健康教育のテーマの選定や方法、④行動変容について、実践研修プログラム;①学生のコミュニケーション能力の向上、②マナーやモラルについて、③運動に関わる身体介助の方法、④健康教育の方法、⑤行動変容を獲得するための実践方法、⑥事業の運営の仕方など、地域研修プログラムの開発(地元自治体も参加する);①地域主体の通いの場の把握および在り方、②在宅での出張指導、散歩道の確認など行動変容への工夫、③閉じこもり高齢者への関わり、④高齢者の社会参加、⑤地域資源とネットワークなどの3つのプログラムの完成を目指し現在の素案の具現化を図る。 29年度は、プログラムの評価を実施する。学生と高齢者間のグループディスカッションやグループワークなどアクティブラーニングで行われた内容について記録や録音・録画をもとにプロセス評価を実施し、教育効果を検証する。プログラムの構成や内容については、試験的に学生20人を対象にプログラム実施し、後にインタビューやアンケートを行い、質的分析を行う。また、基礎研修、実践研修、地域研修において設定されたルーブリックの点数を集計し、信頼性と構成概念の妥当性について検証する。完成したプログラムは関連する学会および学会誌等において成果発表をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者、調査票発送作業、研究協力者データ入力等の人件費・謝金については現在も作業中であり、資料収集と統計解析ソフトと合わせて次年度に執行予定である。なお、統計解析ソフトは一部の機能が不足しているため、バージョンアップの必要性がある。 計画はおおむね順調であるが、データ入力作業が年度を跨いだため次年度の予算執行となる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度前半には研究協力者、調査票発送作業、研究協力者データ入力等の人件費・謝金及び統計解析ソフトの購入について予算を執行する。
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