本研究の目的は、ドキュメンテーションの手法を用いて生徒会の活動を広く学校構成員に開いていくことにより、生徒会活動の活性化を促すというものである。研究の成果は、以下の3点にまとめることができる。 第一に、生徒会活動に関する先行研究の整理である。学習指導要領の中に生徒会活動をを位置付けているのは、ほぼ日本だけであること、しかしながら日本では、近年、活動が低調であるなどの問題を抱えており、生徒会活動が民主主義の教育・市民性の教育の拠点となりうる視点が乏しいことを明らかにした。 第二に、滋賀県公立A中学校において、生徒会活動に関するショートスパンのパネル型質問紙調査を行った。その結果、生徒会活動に積極的に取り組んだ生徒は、自己肯定感が高く、勉強を始めとする学校の諸活動にも意欲的であること、そしてこの結果は、生徒会活動の中心メンバーだけでなく、フォロワーとなる生徒においても同様であった。この結果は、諸外国で行われている生徒会活動が生徒代表のリーダー養成に重きを置き、フォロワーの生徒の育ちをあまり意識していないのと対照的であり、日本の生徒会活動の重要な特徴のひとつだといえる。本調査は日本特別活動学会の研究紀要に査読付き学術論文として採択された。 第三に、滋賀県公立A中学校において、生徒会活動に関する質的調査(参与観察)を行った。生徒会活動を全校の教職員と生徒に開いていくドキュメンテーションの手法を導入したが、生徒会活動の意図と、それに関与する生徒会役員・生徒会顧問教師の「思い」を言語化することには一定の効果があったものの、ドキュメンテーションを生徒自ら行う時間的余裕がないこと、学校内で配布されるプリント物が多様・大量であることから、フォロワーの生徒や教職員全員に、じっくり文書を読んでもらうことが難しい環境にあったことから、効果的に浸透させることができなかった。
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