研究課題/領域番号 |
15K04535
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大江 啓賢 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (40415584)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重度重複障害者 / 重症心身障害 / コミュニケーション / 応答行動 |
研究実績の概要 |
本年度は今までのビデオ分析および療育者への聞き取りシートの分析に加え、OAK Camソフトを用いた微細運動の変化を評価指標として導入した。現在、協力施設において、機器の貸し出し、データの収集、分析を行っている。このデータ収集にあたっては研究協力者である伊勢正明氏とも研究打合せを重ね、複数の施設で実践を試み、データの収集が出来ている。次年度(29年度)の成果公表に向けて、対象者個々のデータ分析および対象者全体の傾向について詳細な分析に取り組んでいる。また、OAK Cam使用前のビデオ分析によるデータと比較検討する予定であるが、本年度についてはここまで至っていない。 一方、初年度(27年度)から実施してきたビデオ分析及び聞き取りシートの結果については、今年度(28年度)は1事例についてデータの整理が終了し、日本育療学会でのポスター発表にて成果公表を行った。併せて、現在10名の事例についてデータの分析を進めており、成果公表した事例と合わせての全体評価を行っている。さらに、そのうちの1事例については、27年度から実施している絵本の読み聞かせを用いた応答行動の確認を本年度実施し、昨年度とは別事例の成果として成果公表を行った。この結果の一部は山形大学特別支援教育臨床科学研究所研究紀要に投稿し、第4号に掲載されている。27年度の発表と併せた2つの報告から、類似する傾向が確認されており、個々の対応ではなく、重度重複障害者に対する応答行動の変化や療育者の対応方法の系統化の一助となり得ることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ分析作業が若干遅れ気味ではあるが、おおむね順調に実践できている。当初の計画立案後に確認することができたOAK Camシステムを用いた分析も活用することができ、ビデオ分析と平行してデータ収集を行うことができている。研究実績の概要でも触れたように、臨床像が異なる重度重複障害者に対する応答行動の分析結果に類似する傾向が確認されており、重度重複障害者に対する応答行動の変化や療育者の対応方法の系統化の一助となり得ることが推測されたことも現在の進捗状況が順調にできていることの根拠と考えている。 収集したデータの分析については、現在は対象者個々のデータの分析に多くの時間を費やしている。最終年度の状況を考えると、この結果分析は少し急ぐ必要があると考えられるが、当初の計画に含まれていなかった手法を追加して分析を試みていることから現況としてはおおむね順調と解釈している。 成果公表については、対象者個々のデータによる報告を行ったが、全体としての報告はできていない。しかしながら年間計画では総括報告は最終年度である29年度に行うこととしているため、現段階での個々のデータを元にした成果報告ができていることはおおむね順調に実践できていると言える。 今後は対象者個々のデータ分析を踏まえ、総括評価、総合考察を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となることから、今までの実践および結果の総括を行う。具体的には、現在収集を進めているデータについては、実践期間および実践回数等、当初の計画時期(回数)までは実践を継続する。平行して、個々の事例におけるデータ分析を進める。個々の事例として分析が終了した結果は、対象者の臨床像および得られた結果の類似性の観点からグルーピングし、対応方法と得られた結果を整理・集約する。これにより支援者の重度重複障害者に対する効果的なコミュニケーション支援方法について整理する。 これを基に、データを収集した研究協力施設において、データ収集時と同一環境での実践を試み、再現性と成果の検証を試みる。さらに、今までの結果と比較検証し、重度重複障害者のコミュニケーション指導における効果的な支援方法の構築を試みる。得られた成果は、学会発表を行うと同時に、論文としてまとめ、関連学会に投稿する予定である。併せて、研究協力施設において結果報告を行うとともに、研究協力施設以外の関連する障害児・者施設や特別支援学校に情報提供することにより、各施設での実践あるいは改良につなげることができるようにする。。 なお、研究期間内で収集したデータおよび記録ついては、保存媒体(ハードディスク・管理ファイル等)を準備し、保管・管理を徹底する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費が当初の計画よりも安価で対応できた(研究協力者として参加している大学から旅費が支給されたため、こちらで支弁する予定だった旅費等を使用しなかったものがあった)。このことから、当初の計画よりも少ない予算額で対応できていている。また、データ分析に関連した、雇い上げ費用や謝金の利用も当初予定額よりも少額で済んでおり、27年度の残金分をそのまま繰り越している形である。 今年度は参加予定学会数が多く、開催地も遠方であることから当初の予算を越える可能性があり、その分の経費を確保する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
データの処理等に時間が必要となるため、雇い上げ人夫の雇用時間が増大することが考えられる。また、学会参加旅費および学会参会費、発表のための資料印刷費や結果検証ために協力施設での再現活動等の実施経費(旅費や器材の運搬等)が必要であり、当初の予定よりも費用超過が予想されるため、そちらに充当する。併せて、得られたデータの保存・管理のために大容量の記録媒体あるいは保管ケースが必要となるために、それらの費用へ充当させる必要がある。
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