研究課題/領域番号 |
15K04538
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
浜田 淳 筑波大学, 人間系, 講師 (80261767)
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研究分担者 |
宮本 俊和 筑波大学, 人間系, 教授 (40200208)
河内 清彦 筑波大学, 名誉教授 (50251004)
和田 恒彦 筑波大学, 人間系, 准教授 (70438993)
徳竹 忠司 筑波大学, 人間系, 講師 (80251007)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 鍼療法 / 刺鍼技術 / 技術指導 / 障害特性 / 特別支援教育 / 職業教育 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究実施計画では、「視覚障害者に対する鍼実技教育に関する文献的研究」が検討の中心であった。視覚障害学習者に対する鍼技術教育に関する文献を電子検索により行ったところ、刺鍼技術の記載は伝統的な施術部位(経穴、いわゆるツボ)、すなわちは刺鍼する施術点の記載が多く、鍼自体をどのように扱って身体内に刺入していくのかということについてはごく僅かであった。論文よりも単行本の形式で認められ、具体的な刺鍼技術の記載は、解剖学に基づいた刺鍼技術に関する文献には認められるものの、ほとんどが晴眼者を対象に視覚的に記述されているものであった。また、教授法等の授業実践に関するものが認められた。 こうした状況のため、視覚障害学習者に刺鍼技術指導を行う際の学習支援を行うには、医療技術教育、体育教育等、刺鍼技術あるいは技術習得に関連する領域の知見を参照する必要があることが判明した。また、視覚障害学習者の障害特性に基づく行動や認知の様式を考慮した技術や教材が必要であることが判明した。 今回の学習課題となる刺鍼技術の、全盲学習者用指導書の試案を作成したので、平成28年度に複数の全盲教員と内容について検討し、指導実践の際に使用する。また、平成28年度に計画されている全盲学習者用の解説骨盤模型の作成に関わる機材等の選定を行い、当初計画の通り遂行する。これらの全盲学習者用の教材と弱視学習者用の視覚的教材を用いた視覚障害学習者用技術指導を行った際の課題達成度と、晴眼学習者に対する示範法中心、すなわち視覚的情報呈示を中心とした技術指導を行った際の課題達成度の比較を平成28年度には実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、視覚障碍者特に全盲学習者に対する刺鍼技術の解説や、刺鍼技術指導のための学習支援の方策、教材作成等に関する文献の集積とそれに基づいた全盲学習者用技術指導法の作成であったが、視覚障害者が鍼療法を行っているのは、わが国独自の状況であるため外国語文献は存在せず、わが国で伝統的に行われている「経絡経穴に対する刺激」に用いられる刺鍼技術は解説するほどの複雑性、危険性を持っていないため、目指す内容の文献はなかった。そのため、文献収集作業が比較的容易であったが、全盲用指導書の原案作成にやや時間がかかった。しかし、全般的には概ね順調である。 全盲学習者用の技術指導書に関しては、原案作成を完了しており、平成28年度には、使用対象である全盲鍼灸師(現役理療科教員)に評価してもらい、内容のブラッシュアップを行い、それを授業実践に用いる。また、授業実践時に用いる各種チェックリストや評価法および評価票の作成を平成28年度早期に行い、実践に備える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度実施の全盲学習者用骨盤模型の作成に関して、既存の解剖模型のスキャンデータを採取する予定であったが、数種類検討してみたところ、元型に適するものが少ない。これは想定外の状況であったので、正確なデータを得る方法を検討しなければならない。画像検査を行って形態情報を得るのが最も正確ということになるが、実現可能性がやや低いので、3Dスキャンデータを編集ソフト上で改変する等、さらなる検討が必要である。 また、晴眼学習者用の視覚的教材(静止画、動画)の作成、弱視学習者用の視覚的教材の編集(障害内容に適うように、晴眼学習者用のものに改変を加える)を予定しており、これらの中で、全盲学習者用の模型(認識対象を除き抽象化したもの)を被写体として弱視学習者用教材とするので、晴眼学習者用に作成された従来のリアルな模型は、全盲学習者や高度弱視学習者にとってはノイズの多い情報呈示になる。抽象化のレベルを決定する基準が必要である。 技術評価の方法について、国内の鍼技術教育に関する文献がほとんどないことから、近隣領域、すなわち医療における注射の技術評価、神経ブロックの技術指導や評価、自己注射の技術指導等、さらには英語圏の国の注射技術指導や評価法に関しての文献調査を新たに行い、参考にする。また、技術指導の参考として体育教育やスポーツ技術指導の知見も参考にすべきと思われる。 今年度は最終的に、晴眼者用の指導過程を作成し、指導実践を行い、視覚障害学習者と晴眼学習者との対比による指導効果の検討まで進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた骨盤模型について、形状の不具合があったため、購入数を減じたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、3Dプリンタ、3Dスキャナを購入する予定である。購入後、模型作製を試行錯誤的に行うため、インク(樹脂)にかかる費用がかなり多くなる可能性がある。 さらに、画像編集や3Dデータ編集のため、最終年度に予定しているコンピュータを前倒しで購入する可能性がある。
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