本研究は,視覚障害学生が教育を受ける際に,音声以外の情報をいち早く獲得/理解し,教員と学生間で的確な情報共有するための教育資料などの作成・提示方法およびインタフェースの指針を得ることを目的として,プロトタイプのシステムを試作し,当事者の協力の下で評価をしながら適確な情報共有の方法を探るものである.最終年度に当たる平成29年度の研究では,これまでに得られた知見を踏まえて,主に以下の4つの課題に取り組んだ. 1)遠隔リモート制御による図形呈示と図形情報共有システムの開発.2)講義における盲ろう者用コミュニケーションシステムの試作. 3)VR空間での弱視者の情報保障に関する特性.4)スポーツ競技技能向上のための音響学的特徴の利用. まず,1)については,遠隔地の学生向けに図形を配信する遠隔教育支援の仕組みの開発を進め,教師と学生の双方向での図形へのアクセス共有をリアルタイムで行えるシステムを試験的に開発した.開発においては,インターネット回線を活用したモバイルネットワークを通じて,任意の場所でサービス展開するための仕様策定と実装を進め,平成29年度内でおおよそのプロトタイプが完成した.この開発では当初の見積より多くの時間を要したことから,実際の教育評価は平成30年度中に実施する見込みとなっている.2)については,平成28年度に開発した授業コンテンツ管理のシステムを改良し,従来から使用されている要約筆記配信ソフトウェアIPTalkと連携し,盲ろうの学生がアクセスするために必要な機能を備えた専用クライアントソフトを開発した.このソフトウェアは,既に,12人規模のクラス内で学ぶ盲ろう学生が平成30年度4月より利用され,今後も更に機能的な充実を図るためのスパイラル開発を推進することとした.その他,関連する他の実績については、本成果に関連する論文業績等で公表した.
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