本研究の目的は,超重症児の学習活動のあり方に関して,共創コミュニケーション(co-creating communication)の観点から,以下の2点を実行・検討することであった.すなわち,第1点目は,超重症児の学習活動に関する長期間にわたる教育実践資料を収集・蓄積し,その実相を明らかにすること.第2点目は,収集された教育実践資料を共創コミュニケーションの観点から検討を重ね,超重症児の学習活動を促進する諸条件について明らかにし,こうした学習活動の意義を検討することであった.第1の目的に関して,2017年4月から2018年3月の間に5名の超重症児への教育的対応の場面において収集された映像資料は以下のとおりであった.いずれの事例も常時人工呼吸器を使用しており,寝たきりの状態である.事例1:視線の動きや表情変化,発声が見出され,共同的活動を重ねるなかで四肢の動きが明瞭になってきた超重症児とのハンド・アンダー・ハンドおよび四肢の動きによるスイッチ入力を介した学習活動に関するセッション25回,事例2:閉眼が困難であるが,わずかな眼球の動きや舌の突出,口角などの身体の動きをOAKスイッチによって入力する超重症児との学習活動に関するセッション6回,事例3:身体の動きが極めて制限される先天性筋疾患事例との視線入力装置を利用した学習活動(ヒラガナ文字による同種見本合わせ状況,ヒラガナ文字と写真との対応に関する異種見本合わせ状況など)に関するセッション27回,事例4および事例5:脊髄性筋萎縮症(SMAⅠ型)を原因疾患とする超重症児で,種々の共同的活動とともに接触型のセンサースイッチあるいは視線入力装置を用いてコミュニケーションエイドを操作したり,パソコンで種々の課題に取り組んだ.事例4が23回,事例5が8回のセッションを実施した.事例の各々について整理・分析が進められた.
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