研究課題/領域番号 |
15K04542
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
金澤 貴之 群馬大学, 教育学部, 教授 (50323324)
|
研究分担者 |
中野 聡子 大阪大学, キャンパスライフ支援センター, 講師 (20359665)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 情報保障 / 復唱方式 / エンパワーメント / インフォーマル / フォーマル / 聴覚障害 / 高等教育 / 音声認識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、聴覚障害学生のエンパワメントの熟成の異議を見いだすべく、学生同士のインフォーマルな支援の形成過程と役割を実践的に研究することで、フォーマル/インフォーマルな支援の共存の重要性を明らかにすることである。そこで本研究最終年度は、平成27年度の実態調査や試行的実践、平成28年度における類型化した場面ごとの実践的検証を踏まえ、特に音声認識を活用した字幕呈示方法を中心について、場面ごとに最適な方法を検討し、その結果をまとめた。 場面は音声の入力方法(直接方式/復唱方式)と字幕の修正方法(学生相互支援方式/専従修正方式)の使い分けに着目し、5場面(卒論ゼミ、グループ発表、シンポジウム、聴覚障害当事者が話者となる講演会、研究会)に分類した。 その結果として、1)フォーマルな場面では復唱方式、専従修正方式を採用することにより情報保障の質を高めることが求められる一方で、2)インフォーマルな場面では、学生相互支援方式により情報保障に対する意識が働くことで、一定程度聴覚障害学生の参加しやすさを発生させることに意義が見出だせるということが示された。しかしながら、3)学生の自主性のみに任せてしまうと、いわゆる雑談場面では情報保障への意識が途切れてしまうという課題や、それゆえの、4)障害者差別解消法やインクルーシブ教育のあり方などの概説を行うことで意識付けを図ることで、エンパワーメントや関係者の「歩み寄り」が促進される可能性も見いだされた。 公的な情報保障の配置が困難なインフォーマルな場では友人による合理的配慮が重要となる。人間関係を損なわないナチュラルサポートの範囲で実質的な支援が実現できるためには、場面に最適化した支援機器の活用が重要である反面、相互支援により皆が情報共有することの意義を学生自身が実感し、認識できるような気づきの機会を提供することも重要であるといえる。
|