研究課題/領域番号 |
15K04547
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
大伴 潔 東京学芸大学, 教育実践研究支援センター, 教授 (30213789)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 言語発達 / 通級による指導 / 学齢児 / アセスメント / 特別支援教育 / 通常の学級 |
研究実績の概要 |
通級指導教室(学級)における指導方法の実態を明らかにするため、通級指導の場を設置する東京都79校、神奈川県61校、千葉県167校の通級指導担当者を対象として質問紙調査を実施し、127校(41.4%)から回答を得た。質問紙は言語発達の遅れを主訴として指導を受ける児童について、児童の実態と具体的な指導方法に関する項目から成る。分析の結果、通級を利用する児童の半数以上が言語発達の遅れを有していることが明らかになった。語彙の習得に困難がある児童に対する指導方法は大きく分けて、語の想起と意味の言語化にかかわる活動、新しい語彙の習得、文脈における語の活用の3つに分けられた。ゲーム性のある活動を通した語彙の学習に加えて、文章や会話の文脈の活用、視覚的情報提示の活用を通して語彙習得を図っている実態が明らかになった。読み書き困難については、フラッシュカードを用いて文字や単語をスムーズに読むことを目標とする指導や、拍単位への分解や特殊拍に焦点を当てた音韻意識の指導などが中心であった。音読の改善を目指した指導では、文節等の区切り等に横線を引くなど読みやすくするための工夫を取り入れたり、語をまとまりとして把握する単語検索課題を行ったりする学級が多かった。文章の読解の改善にあたっては、文章の長さや内容の複雑さを調整した教材を用いたり、絵や図などの視覚的な情報を手がかりとしたり、文章で使われる語彙の習得を並行する指導などが行われていた。漢字の読み書きの改善では、漢字を部首等に分けたカードを作り覚えたり、漢字の書き方を言語化して覚えたりする工夫や、タブレット端末の活用を挙げた回答もあった。指導方法は多様であるが、教室間格差が生じないように学校間で指導方法を共有し、担当者の異動があっても児童に継続的な支援を提供できるような指導体制の構築が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小学校の通級指導教室・学級の協力を得て、通級による指導を受ける児童の実態および通級指導における指導方法について情報を蓄積することができた。得られたデータの整理・分析に加えて、海外での実践に関する情報の収集も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
学齢児を対象とした指導方法を「文・文章の聴覚的理解」「語彙」「慣用句・心的語彙・皮肉」「文の表現」「想像力・柔軟性」といった領域別に体系化する。海外での実践とも照らし合わせて、学齢児への有効な指導法を提言するとともに、通級で指導を受けている児童を対象に、アセスメントから得られるプロフィールにもとづき、特定の領域で特に困難を示す児童における指導実践の有効性を検証する。
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