東京都、神奈川県、千葉県の通級指導教室(学級)を対象にして指導方法の実態に関する調査の結果や海外の指導に関する文献等を踏まえて、学齢期における語彙領域の言語指導については以下の5つの指導方針が抽出できた:1.言葉について客観的に考えるメタ言語的活動、2.子供の言い誤りや言いよどみを捉えて語を教える、3.指導する語彙を選択して直接アプローチする、4.文字を使い知らない言葉を視覚化する、5.言葉を学ぶ方法を学ぶ。「慣用句・心的語彙」領域では、1.意味の手がかりから慣用句を想起する、2.架空の状況に応じた気持ちを言葉で表現する、3.特定の心的語彙に対応する場面を想起する、4.登場人物の心情を表す文章を読む、5.ゲーム等の中で気持ちを言葉で表現する等の指導方針が抽出された。言語表現に関する指導方法の回答を類型化からは、①経験や活動に基づき語る、②文法面または形式面で整った文や語りを産出する、③手がかりをもとにことばで表現する、④ことばの意味をことばで表現するメタ言語的活動、の4つの指導内容に整理された。言語理解にかかわる指導では、①やり取りのある文脈、設定された活動、言語的文脈の中でことばを聞いて理解する、②理解する方策を活用する、などが抽出された。コミュニケーションの改善を目指す指導においては、ロールプレイやSSTカード等の使用を通して特定の場面などを想定して適切なコミュニケーション行動を学ぶ活動、自由会話や好きな活動における自発的発話の導出とやり取りへの展開、状況に応じた発話の促しなどに整理された。文や文章の聴覚的理解、語彙知識、発話表現、柔軟性、リテラシーの5領域にわたる10の下位検査によるアセスメント(LCSA)から個人の発達的プロフィールを明らかにし、各児の課題に応じた指導法や教材を体系化し提案した。
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