研究課題/領域番号 |
15K04549
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
村中 智彦 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (90293274)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 協同学習 / 特別支援学校 / 知的障害 / 自閉症スペクトラム障害 / 集団随伴性 |
研究実績の概要 |
知的障害特別支援学校・支援学級には,知的障害(ID)や自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもが多く在籍している。IDやASDの子どもたちの協同学習を成立させるためには,仲間同士の相互交渉機会が必要となる。1年目の27年度に実施した大学研究センターの臨床研究より,小集団指導のゲーム活動において,集団随伴性(Group-oriented Contingencies,以下,GC)を適用することで,援助や励ましといった仲間への自発的な働きかけが生じることが明らかになった。この結果に基づき,2年目の28年度では,大学研究センターの臨床研究において,ID及びASD児のゲーム活動においてGCを適用し,仲間への自発的な働きかけについて,反応型(topography)と機能(function)の観点から時系列に分析した。参加児は,特別支援学校小学部及び小学校特別支援学級1~3年に在籍するIDやASD児4名と,その兄弟で定型発達児3名の計7名であった。障害のある子とない子が協同的に学習に取り組むゲーム活動を設定した。28年4~12月の8か月,放課後の週1回のペースで指導を行い,計29回を実施した。課題内容は「玉入れ」「カード釣り」で,時間は約40分であった。反転計画法(ABABデザイン)を適用し,個人随伴性条件とGC条件を実施した。その結果,援助者であった参加児4名に共通して,「玉入れ」「カード釣り」課題ともに,GC条件でIC条件よりも仲間への自発的な働きかけが顕著に増加した。反応型では音声言語,物の提示や操作,身体接触が多く,機能では指示・励まし・促し,称賛,身体統制,代行,非難が多かった。援助者が既に有しているレパートリーであること,非援助者の課題遂行が促されない場合に働きかけの修正が認められること,身体統制・代行・非難といったネガティブな働きかけも生起することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27及び28年度の大学での臨床研究より,小集団指導においてGCを適用することで,協同学習につながる仲間への自発的でポジティブな働きかけが促されること,一方で仲間を身体統制したり仲間の課題遂行を代行したり非難したりするネガティブな働きかけが生起することも明らかになった。こうした成果と課題を踏まえて,29年度では大学での臨床研究を継続して実施する。特に,28年度に実施したGGの適用による仲間への自発的な働きかけが仲間の課題遂行を促すようなポジティブな成果を生じさせる条件,具体的には集団サイズ,課題内容や特性,付加手続きの検討に焦点を当てた臨床研究を継続して実施する。併せて,3年目の29年度に計画していた学校コンサルテーションに基づく実践研究を行う。 以上のことから,(2)おおむね順調に進展していると自己点検による評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
29年度では,1,2年目の成果と課題を踏まえて,継続して大学での臨床研究を実施する。併せて,学校コンサルテーションに基づく実践研究を行う。 臨床研究では,GCを適用し,仲間の課題遂行を促すポジティブな相互交渉の促進とその要因の解明を目的とする。参加児は,28年度と同様に,小学校低学年のID及びASD児,兄弟児とする。10名程度の小集団指導を設定し,課題内容の異なる2課題を実施する。GCの集団サイズをペア(2名)条件と全員(10名)条件を実施する。期間は29年5月~11月とし,1回当たりの指導時間を1時間とする。主指導者1名(研究代表者)と補助指導者2~3名(大学院生)のチームティーチングで指導を行う。 特別支援学校に研究協力を依頼し,協同学習をテーマとした学校コンサルテーションに基づく実践研究を行う。期間は29年6~12月とする。大学での臨床研究の成果に基づく協同学習をテーマとしたモデル授業を協力校に提案し,その視点や手続きを取り入れた授業改善を行う。実践研究を進めるデザインとして,研究代表者は,授業改善のプロセスに積極的に関与し,主に分析作業とその結果に基づく授業改善に向けた予測と提案を行う。研究協力者の学校教員は,授業計画立案と実践を担当する。学校教員による①授業計画と②実践,研究者による③分析結果に基づく予測と授業改善への提案という①~③の一連の作業を繰り返すことで授業改善を促進する。定点観察の手法を用いて,学校教員は対象授業を週1回のペースでビデオ録画する。学校コンサルテーションに基づく授業改善を通じて,ID及びASD児の協同学習を促すためのモデル授業の提案を目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度は,当初予定していた知的障害特別支援学校の生態学的調査を実施しなかったため,特に旅費等が予定していた使用額よりも少なく,計画していた予算額よりも下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度は,大学での臨床研究と学校での実践研究を実施するため,前年度の未使用額(55円)を計画的に使用する予定である。
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