特別支援学校の授業場面において、子ども同士が互いにプラスの影響を受け、ともに学び合う協同学習の成立には、まずは子ども同士の相互交渉機会を設定する必要がある。相互交渉の形態には、ペアや小集団が想定されるが、いずれの形態が望ましいのか、学習内容で違いがあるのかは検討されていない。集団随伴性(Group-oriented Contingencies、以下GC)の適用によって、指導者が直接指導していないのに援助や励ましといった仲間への自発的な働きかけが促進されることが報告されている(Alexander et al.,1976)。また、GCの強化随伴単位(ペアや小集団)が仲間への働きかけの生起に影響を及ぼす可能性が示唆されている(鶴見ら,2012)。 最終年の29年度では、昨年度実施した臨床研究をさらに発展させ、ASD児と知的障害児、定型発達児が協同的に取り組むインクルーシブな小集団学習にGCを適用し、強化随伴単位の違いが仲間への働きかけに及ぼす効果を検討した。参加児は、特別支援学校小学部等に在籍する1~3年のASDやID(ダウン症含む)5名、定型発達児4名の計9名であった。28年4~11月の8ヶ月、大学プレールームで週1回(全28回)の指導を実施した。玉入れ課題と工作課題の2つを実施し、指導時間は約40分であった。操作交代デザインを適用し、個人随伴性とGC、GCにおけるペア/小集団条件の比較を行った。その結果、2つの課題に共通して、GCでは個人随伴性よりも仲間への働きかけが増加し、指導者による働きかけの指導が有効であること、小集団条件では最初メンバー全員への「みんな、頑張れ」等の音声言語が多くセッション後半で特定のメンバーへの個別の身体接触に移行するといったペア/小集団条件で働きかけの反応型と機能に差があること、働きかけは仲間の適切な応答に支えられることが明らかになった。
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