研究課題/領域番号 |
15K04551
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
西村 優紀美 富山大学, 保健管理センター, 准教授 (80272897)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 学内実習 / 職業体験 / 職業評価 / インターンシップ |
研究実績の概要 |
本研究は、高機能自閉症スペクトラム障害大学生に対するキャリア教育のあり方を明らかにすると共に、就職活動のための支援プログラムを開発することを目的としている。場環境を整えていくことによって、雇用が促進されることが期待される。 平成27年度は、修学支援を継続している高機能自閉症スペクトラム障害学生に対して、①ボランティア活動、②ピアサポート活動、③学外就労移行支援事業所での訓練をもってインターンシップとみなし、企画した。それぞれの活動における当該学生の行動分析を行うとともに、当該学生とその指導に当たった支援者に対するインタビューを行い、支援者は活動を共にしながらどのようにコミュニケーションすることが、当該学生の活動性を高めることに繋がるのかを分析した。一般的に、「誰かのために働く」ということは、高機能自閉症スペクトラム障害学生が最も苦手とする「他者の視点(自分の視点とは異なる視点を他者は持っているという認識)」を想像する必要があるため、インタビューでは、自分の行動が相手に影響を与えるという状況を、ビデオや写真を通して振り返り、「自己-他者」関係を俯瞰的に図表に表すための資料作りを行った。 ボランティア活動やピアサポート活動よりも、学外インターンシップでの体験が彼らの行動変容に直結するという結果が得られた。ボランティア活動やピアサポート活動は、学内での活動であり、大学支援者が指示する立場として行動を共にするため、支援者依存的であり、働くことや職業人としての態度を意識しにくい環境であったため、疑似体験の域を超えることができなかった。しかし、学外就労移行支援事業所では、大学支援者は同席せず、事業所支援者からの訓練のみであり、他の訓練生と同様の職業評価を受けたことにより、働く意識を明確に持ち、職業人としての未来像を描くことができたことが成果につながったと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
学内で行う①ボランティア活動、②ピアサポート活動は修学支援の延長線上で行うことができ、当初の目的を達成している。当初は、学内インターンシップを計画していたが、①と②に関する学生の振り返りを見ると、大学支援者が学内インターンシップに介入することによって、「働く」ことを意識しにくい環境になってしまうことが想定された。 そこで、大学と協力関係を取り結ぶことができる就労移行支援事業所を複数選定し、学外訓練をインターンシップのプレ体験として位置づけ、1週間ずつのプログラムを行った。その結果、当初は次年度に行う予定であった「学外の就労移行支援事業での体験プログラムに参加し、同様の調査を行う」という段階に早めに取り組むことができている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)前年度で得られた知見をもとに、高機能自閉症スペクトラム学生が学外の就労移行支援事業での体験プログラムに参加するとともに、企業での施設外就労体験を行い、同様の調査を行う。つまり、①活動における当該学生の行動分析を行うとともに、②当該学生とその指導に当たった学外支援者をペアとしたインタビューを行い、③学外支援者が活動を共にしながらどのようにコミュニケーションすることが、当該学生の活動性を高めることに繋がるのかを解明する。企業での学外実習を行うこと、あるいは学外支援者が指導に当たることにより、当該学生の「働く」という意識が事業所内実習の場合とどのように異なり、どのように意識の変容や行動の変容をもたらすかについてインタビューを通して振り返る。 活動の場を学内から学外へ、そして、企業へと発展させていくことによって、新奇な場や出来事に不安感を持ちやすい高機能自閉症スペクトラム障害学生の就職活動への不安感を減少する可能性があると推測するが、実際には当該学生の意識変容が場の違いによって起こりうるのかを検証していく。(4)学外での活動が修学上、どのような影響があるかを個別面談でのやり取りを分析することによって明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
企業へのインターンシップのために使用する旅費が、実際には就労移行支援事業所でのインターンシップのみとなったため、次年度に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
交通費(富山‐美川)3,680円×2(往復)×4(日間)=29,440円
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