1.高機能自閉症スペクトラム学生の就労移行支援事業所での体験プログラムが、働くイメージを具体化し、自身の働き方を客観的な指標であらわされることの有効性が示された。特に、「働く人」と「上司」、「客観的な評価者」の立場を交代させることによって、自身の振る舞い方や発語についての気づきが多く、支援者からの一方的な評価よりも内政が可能であった。一方で、インターンシップでは、環境への配慮や人的サポートの体制を担保することができにくく、受け入れ先との連携がとりにくい状況であり、「働く」ことの意義を感じることができない学生が多かった。 2.企業に就職した卒業生が職場に適応していくプロセスを、①大学支援者、②就労移行支援事業所、③企業担当者で整理し、段階的な移行支援の在り方を提案した。大学や就労移行支援事業所では、一人の担当者がすべての活動を継続的に支援するスタイルがとられるが、企業では「直接的な指示を与える指導者」、「仕事以外の情報を提供する者」、「全体を調整する上司」というように、複数の担当者が重層的に指導に当たるというスタイルが卒業生にとって有効な支援体制となった。 3.就職した卒業生へのフォローアップ支援が、継続的で安定的な就職を果たす大きな要因となっている。配置換えや異動による環境の変化が、もともと持っている社会的脆弱さを誘発するきっかけとなる場合もあるが、フォローアップ支援という安定的な支援の場があることで、卒業生の混乱は早期に収束することができる。 4.修学支援に引き続き、就職活動支援、就職後のフォローアップ支援という支援の流れを構築し、卒業生同士の交流も取り入れることによって、QOLやWLBについてそれぞれが認識し、適応的な社会生活の実現に寄与することが実証された。
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