研究課題/領域番号 |
15K04559
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉利 宗久 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60346111)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インクルーシブ教育 / 医療的ケア |
研究実績の概要 |
本研究は、通常の学校における「医療的ケア」の提供を法的に保障しながら、その性質や提供者の役割を判例の蓄積を通じて確立しつつある米国の経験に着目し、「医療的ケア」をめぐる持続可能な学校システムの条件を明らかにするものである。具体的には、問題の構造を法制と実践の側面から究明するアプローチを採用することにより、以下の2つの問いに答えることを目的とする。 1)米国において如何なる議論が展開し、どのようなシステムが導入・運用されているのか。 2)教員は、どのようなサポートのもと、どのような役割を果たしうるのか。
本年度は、インクルーシブ教育の理念に即した特別支援教育を推進し、定着させるための学校システムの構築に寄与する知見を得るため、米国における関連法制度の改正過程と判例の分析を試みた。すなわち、学校における「医療的ケア」の提供を保障する法規定の内容とその生成過程を分析し、実践レベルでの運用に反映される際の論点を判例の分析を通して明らかにしようとした。とりわけ、カリフォルニア州法の規定をめぐる議論(American Nurses Association v. Torlakson)の重点的な分析を行った。この裁判は、2005 年の提訴以来、州法が誰にインスリンを投与することを認めるかの議論を展開し、2014 年5月に州最高裁判所での最終的な判断が確定した。スクールナースの長年の不足を背景に、訓練を受けた無資格の学校職員による薬物投与が容認された結果は、同様の潜在的問題を孕むわが国の今後のシステム設計に少なからぬ示唆を含むものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
判例の分析を進めつつ、教員に対する質問紙調査を実施するなど、予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書のスケジュールに基づき、実践的な課題の解明と対応策の検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
教員に対する実態調査の方法の工夫による経費の軽減が実現し、また今後における実態調査の費用確保が必要と判断されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実践的な課題の解明を意図し、今後の実態調査の実施に使用する予定である。
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