平成29年度は、晴眼者23名を対象にした実験と、弱視当事者15名を対象にした実験を実施した。晴眼者対象の実験結果より、Mansfieladの最大文字サイズ推定アルゴリズムのデジタル・リーディングの表示変更の際の最大文字サイズの推定が可能であることを明らかにした。この結果から、最大文字サイズが最も大きいのは行移形式と切片形式であり、次いで一行形式、最も小さい表示形式は固定形式であった。つまり、デジタル・リーディングにおいて文字を拡大しても読速度を低下させない表示形式は行移形式と切片形式であり、その2つの中でも読速度が速いのは行移形式であることを明らかにした。 これらの結果に基づき、弱視者15名(3名は中断)を対象にtest-retest法により4つの表示形式別の最大文字サイズを推定した。実験は多数の弱視の実験参加者の確保が可能な東京で会議室を借用して実施した。その結果、4つの表示形式別のtest-retestの最大文字サイズの相関係数は0.86以上であり,十分な信頼性が保たれることを当事者実験より確認した。このことから、Mansfieldの最大文字サイズ推定アルゴリズムはデジタル・リーディングの表示形式別の最大文字サイズの推定において、弱視者において活用でき、さらにその信頼性は高いことが明らかとなった。これらのことから、タブレット端末やスマートフォンなどを弱視(ロービジョン)者が活用して読書する場合、ホームページのような画面幅で改行する表示形式が最も効率的であることや、拡大に最も敏感に読速度に抑制的に効果を表すのはPDFなどの固定形式であることが明らかとなった。さらに個別的な視覚特性に応じた文字サイズの推定には、Mansfieladのアルゴリズムの適用が効果的であることが明らかとなった。
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