研究課題/領域番号 |
15K04561
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中野 広輔 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (60735330)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | タブレット端末 / 液晶画面 / デジタルペン / 描画順序 |
研究実績の概要 |
Rey複雑図形を実際に被験者に実施する際に、被験者の実行機能の参考情報を得るためのハノイの塔や性格・行動傾向をチェックするためのアセスメントツールを入手し、心理検査補助員となる学生とともに検査の試用を開始した。また、検査専用のノートパソコンにデジタル版の実行機能検査をインストールし、BQSSと合わせた検査セット一式、検査手順やマニュアル、同意書の作成などの準備を進めた。また、Rey複雑図形でに関する発表と情報収集をかねて、ハノイ教育大学とユニセフが共催したインクルーシブ教育に関する国際学会に参加した。 試験的に様々な液晶端末にROCFを描画したところ、液晶への描画感覚が機種によってかなり異なること、計画通りのSurface Proへの描画を前提とするとそれ以外のデバイスに描画したケースにおける使用感とずれてしまう危険性が生じた。するとこの計画が目指した「ペンスイッチ法のような描画を中断させ、描画順序に影響を与える事態を避ける」状態が達成できない恐れがあるため、描画を中断せずに信頼性のあるデジタル描画記録が書き順まで含めて保存できるツールを検討し直すこととした。 アノトデジタルペンは、最も汎用されている描画・書字結果のみ保存されるデジタルペンとは異なり、筆跡を忠実に再生する機能が備わっていた。また描画感覚としては通常のペンと全く同じであり、様々な液晶に対して様々なスタイラスペンで描く可能性のあるタブレット描画に比して頑健なデータ収集が可能であり、少数購入して描画感覚を試験的に体感し、研究目的を達成しうると判断して追加購入した。なお、このアノトデジタルペンはBluetooth機能を搭載しており、Opennoteという専用ソフトと同時に使用すると最大10人の描画を一度に実施可能なため、昨年度後半は複数の学生に同時にアノトデジタルペンを使用するトライアルを中心に行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タブレット端末の液晶画面にスタイラスペンを用いてROCFを描画する方法では、各個人がどのようなデバイスを選んだかによって描画感覚が様々に変化してしまうことが判明した。しかし、あらゆるケースにおいて同一のデバイスで描画するという規制をすることは検査の汎用促進の観点からしても非現実的であり、どのような状況下でも描画感覚に大差のないデジタル記録ツールを再考し直す必要が生じた。結果、アナログのペンと同じ感覚で筆跡までデジタル記録するアノトデジタルペンを試用し、それを購入して使用感覚を繰り返しトライアルする作業を行う必要が生じたため軽度の遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
アノトデジタルペンによる個人の描画感覚、同時複数描画による不具合がないかどうか、などのトライアルを続け、まずは健常成人を中心としたROCFの実際の描画データを収集する必要がある。また、同時に実行機能、性格行動傾向などのチェックを同時に実施しながらROCFの描画順序などの自然傾向と個人差について分析を進めていく。その結果、成人に使用した際の、成人間でも多彩となる項目と成人であれば個人間の差が少なく均質化する項目とを判別していき正常データとしていく。その上で、最終的には小児や発達障害を持つ被験者のデータを収集し特徴を分析していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
タブレット液晶画面への描画記録方式から、筆跡記録機能が標準装備されたデジタルペンへの描画記録に切り替える必要が生じたため、研究の全体進行にやや遅れが生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
デジタルペン記録のトライアルを繰り返し、被験者への実施に問題がないと判断したうえで、補助心理検査員を雇用しながら健常成人を中心としたROCF描画データを順次蓄積していく。同時複数箇所の検査も計画していたため検査用コンピューターを追加で購入しながら検査データ収集を繰り返していく予定である。
|