本研究の目的は、学習障害の児童に早期に対応するために、学習の進捗状況をモニターするための手立てとしてカリキュラムに基づく尺度(Currriculum-Based Measurement; 以下CBM)を標準化し、それを用いて指導の効果を検討することであった。平成30年度は、1)通常の学級の児童を対象に計算CBMとMaze課題のCBMを実施し、その尺度の信頼性と妥当性を検討すること、2)学習障害の児童を対象に視写と計算を実施し、指導による効果を検討することであった。 1)について、小学校の協力を得て、計28回にわたり2年生から6年生までの317人に計算CBMを、また4年生から6年生までの158人にMaze課題を実施することができた。7種類のテスト間で有意な相関があることが示されたことから、テストの信頼性があると結論づけた。妥当性については教研式標準学力検査(NRT)との相関を調べたところ、計算CBMと算数のSS、Maze課題と国語のSSとの間に有意な相関関係があることが示された。したがって、算数CBMとMaze課題は、信頼性と妥当性をもつことが実証された。 2)については、20人の学習障害と診断を受けている児童を対象に、計算CBMと視写CBMを用いて学習進捗状況を定期的に把握した。その結果、成績が上昇し定型の児童の平均にまで到達した児童もみられたが、全体の児童の平均が上昇しているため、相対的な位置は変化がなかった児童やさらに定型の児童との得点の差が開いているものもいた。得点の相対的な位置が下がった児童は、学習課題としていない教科でのものが多かった。 以上の結果より、計算CBMとMaze課題のCBMは学力検査との相関が高いことから、学力を把握することができ、わずかに3分間で国語と算数の学力を評価できることから、学習の進捗状況をモニターする尺度として有用である。
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