研究課題/領域番号 |
15K04566
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
片岡 美華 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (60452926)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自己権利擁護 / 発達障害 / 自己理解 / 提唱力 / 発達の高次化 / 教育的プログラム / 文化的差異 |
研究実績の概要 |
本研究は、発達障害のある人のセルフアドボカシースキル(SAS)の獲得と活用状況を発達的観点からアプローチし、新たな力の獲得が次のSASを向上させ活用を広げていくとする高次化仮説に対して理論的、臨床的に検討を試みるものである。平成29年度の当初計画では、最終年度として最終版SASプログラムの作成とSASの高次化理論についての一定の成果を示す予定であった。しかしながら平成28年より産前産後休暇並びに育児休業に入ったため、研究を中断せざるを得ない状態にある。 平成29年度は、丸1年間中断期間にあったが、セルフアドボカシー(SA)プログラムの実施は研究チームにより継続しており、9・10歳の発達をこえつつある対象児のデータ収集並びに14歳の対象児の一部データ分析が行えた(A群)。さらに平成27年度の研究より課題となっていたグループプログラムの実施について試行段階までこぎつけることができた。また、本研究は、文化的差異にも目をむけSAに関する海外の取組についても研究を行っている。この点については、7月にオーストラリアで開催された国際LD学会での発表により海外の研究者との議論が実現できた。具体的には、台湾の研究者とのラウンドテーブル開催において、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、シンガポールの研究者とSAやそれに関わる自立・キャリア教育について議論を深めたことである。結果、筆者が当初考えていた文化的差異が大きく存在するわけではなく、支援提唱力については、SAの先進国といわれる欧米においても教育的支援が必要なこと、近年、活発に議論されることが減り、そのため、改めて現代に合ったプログラムが必要なことなどが確認できた。 なお、歴史的背景や、SAと合理的配慮、用語整理、プログラム紹介などこれまでの研究成果を書籍としてまとめ出版することができたのは大きな成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年6月より産前産後休暇並びに育児休業に入り、平成29年度は丸一年間研究を中断した状態であったため。しかしながら、プログラム実施スタッフからなるSA研究チームにより、当初研究目的1のSASの深化について、自己理解の発達についての縦断的なデータ(A群)を収集することができていることや、平成27年度に新たに研究課題となったSAグループプログラムに着手できたこと、そして当初平成29年度の計画にあった、文化的差異の検討について、アジアのみならず、オセアニア、アメリカの研究者と議論を交わし、新たな知見を得ることができたこと(私費による国際学会参加)があげられる。さらに、これまでの先行研究やSAプログラムB群の実践の一部を含めた書籍を出版ができたことは、何より大きな成果であったと言える。このことから、昨年度の「遅れている」状態からやや脱して「やや遅れている」状態にあると考える。とりわけ書籍出版については、自己理解の発達や、周囲の理解と体制整備(当初研究目的2)についても言及しており、本研究でも特に意識をしている2点について意見をまとめることができた。また、これまでの課題となっていた用語の整理や定義づけについても明確にできたことや、先行事例や海外のプログラム紹介についてもまとめることができたことも成果と考える。 なお、本研究の最終目的であるSASの高次化に関する理論的検討については、継続的に行っているものの、成果として表すには引き続きデータ収集、分析を要する。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も育児休業中につき、研究が中断される予定である。今後の推進については、すでに研究再開後(平成31年度予定)の実施計画を提出済みであるが(様式F-13-2)、それに先立ち、平成30年度は、SA研究チームによるプログラムの継続的実施(9・10歳の発達を中心に、12歳の力の芽生えを見る)、平成31年度から本格実施を目指すグループプログラムへの模索、これまでの対象児についてのデータ分析(既習のB群のデータや14歳の節目にある対象児のデータなど)を中心に行いたい。また、私費で参加する予定である国際学会においての文化的差異の検討や、特殊教育学会でのシンポジウム開催における、プログラム内容やSASの高次化に関しての理論的検討を引き続き行いたいと考える。研究中断期間につき、制限も多いと予想されるが、文献整理やSA研究チームとの連携など復帰後に円滑に研究に戻れるよう可能な限り推進を図りたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 育児休業中につき、研究を中断しているため。 (使用計画) 平成31年度より復帰予定であり、復帰後に適切に使用する。具体的には、プログラム実施にかかる費用、研究成果報告のための学会発表並びに報告書作成のためにかかる費用である。
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