研究課題/領域番号 |
15K04566
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
片岡 美華 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (60452926)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己権利擁護 / 発達段階 / 自己理解 / 提唱力 / 発達障害者支援 / 合理的配慮 / 教育的プログラム / 文化的差異 |
研究実績の概要 |
本研究は、発達障害のある人のセルフアドボカシースキル(SAS)の獲得と活用状況を発達的観点からアプローチし、新たな力の獲得が次のSASを向上させ活用していくとする高次化仮説に対して理論的、臨床的に検討を試みるものである。しかし、2016年より産前産後休暇並びに育児休業に入り、当初は2019年度より復帰予定としていたが、新たに2018年より産前産後休暇並びに育児休業のため2019年度末まで研究を中断することとなった。 2019年度は、これまでのデータを分析したり成果をまとめたり、研究チームによって継続されていたセルフアドボカシー(SA)プログラムの参加者へのフォローアップに努めたりして、最低限、研究を維持してきた。研究成果については、以前から準備してきたIASSIDD世界大会(英国・グラスゴー)で発表したり、従前より支援システムや文化差について研究してきたオーストラリアについて学会報告するなど(11月)、一部新しいデータを交えながら、これまでの知見を報告することができた。とりわけIASSIDD世界大会では、シンガポール、オランダ、南アフリカなど多彩な地域で従事する臨床家や研究者から意見を得ることができ、特に医師からのSAプログラムに対する反応がよかった。なお本来であれば、2月に台湾の学会でSAについての研究成果を基調講演にて報告する予定であったが、コロナウィルスの影響のため延期となり、次年度に持ち越されている。 一方、SAプログラムについては、現場で指示する代替のスーパーバイザーと連携を図り、プログラムを進めてきたが、健康上の理由で急に退職されることとなりプログラムの実施も中断した状態となっている。プログラムの参加者(未成年の為保護者)に対しては、メールや面談によって状況を把握し、関係の維持に努めているが、スタッフの継続的養成が行えず、課題として残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2016年度より2019年度末まで産前産後休暇並びに育児休業にあり、研究を中断した状態にあった。休業中も研究チームによりSAプログラムを継続的に実施し、2017年には書籍としてまとめ、この間を通じて学会発表や論文発表を行ってきている。本年度も国際学会への参加発表、国内学会でのシンポジウムの開催、シンポジウムでの報告と主にこれまでの知見の共有と議論を行った。この点については中断による研究の遅れを挽回できたと考えている。しかし、プログラムが中断してしまったことによりデータ収集が途切れ、縦断的に発達とセルフアドボカシースキルの獲得状況を見ていくことが困難になった。とりわけプログラム実施者養成の中断は、今後の臨床研究に影響があると考える。また、コロナウィルスの影響により、国際学会での議論が延期されたことや、研究の速やかな再開のための準備がままならないことから昨年度よりも一段下げた「遅れている」状態とした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度より研究を再開する予定であり、内容についてはすでに提出済みの実施計画(F-13-2)に基づいて行うつもりであるが、この実施計画書提出後に、プログラム中断を余儀なくされたことから、さらに計画の修正が必要となっている。具体的には、現在中断しているSAプログラムの再開を目指し、スタッフの養成を行うこと、継続的に参加してもらっていた参加者については、進級も重なり状況が変わることから、現況の確認とともに新たな参加者を募ることも必要であると考える。ただし、スタッフの養成については「周囲の体制」と関わって当初からその方法や養成する内容、技量の確保など、養成における要点整理が必要となっていた。そこで今回のことをプラスにとらえ今年度はスタッフ養成についても検討課題とする。 一方最も大きな問題はコロナウィルスの影響と考えており、プログラムが対面で行われることから、この再開については安全面の確保ができてからと考える。さらに、世界的な状況を鑑みると、参加を予定していた国際学会に行くのは難しく「文化的差異」についての検証のための海外渡航も困難と予想される。かろうじて年度後半の国内学会での議論や発表が可能と考えられ、これらのことから次年度の研究計画が当初の通りには進まず、開始も遅れることが見込まれる。そこで、文献のアップデートや理論的検討など、研究室で行うことができることを年度当初に行うよう対応策として計画している。また先の研究実施計画にも記したように、これまでのデータの分析(B群の追跡調査に関しての聞き取り調査の結果、8歳から15歳の事例や文化的差異)についても力を入れたいと考える。これについて現在学内の研究支援制度に申請をしており、育児との両立を図るため可能な限り制度を使って研究を継続できるように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 育児休業中により研究を中断していたため。 (使用計画) 2020年度より復帰予定であり、計画としては、最新の文献収集、プログラム実施とデータ分析に必要な経費(人件費含む)、研究成果報告のための学会参加発表費用とその旅費。英文校閲費、データ保存に必要な機器。とりわけ4年間休業したことからパソコンやプリンターを含めた機器・消耗品のメンテナンスにも経費が必要となると考えている。
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