研究課題/領域番号 |
15K04568
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅野 孝平 京都大学, こころの未来研究センター, 特定研究員 (50713319)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発達性ディスレクシア / 読字能力 / 文字間隔の変化 |
研究実績の概要 |
(1)発達性ディスレクシア(以下、ディスレクシア)の読字中の脳活動計測課題の設計 文字間隔の変化が、ディスレクシアの読字にどう影響するかを調べるfMRI課題の設計を行なった。併せて、漢字とひらがなの文字種の違いによる読字中の脳活動の違いを調査する課題についても検討した。 (2)fMRI実験のための基礎資料の収集 ①ディスレクシア児の単語読字に及ぼす文字間隔の影響の調査:大阪医科大学LDセンターに通所するディスレクシア児と定型発達小児を対象に、文字間隔を0から2文字までの3段階に変化させた、ひらがな4文字の単語(実在語と非実在語の2種)を読んでもらい、その音読時間と正答率を調査した。 ②定型発達者の単語読字に及ぼす文字間隔の影響の調査:定型発達成人を対象に、9種類の文字間隔で表記したひらがな4文字の実在語と非実在語の音読時間を測定した。実在語は親密度が高い語を選定し、非実在語は実在語の文字を用いた無意味語を作成し、刺激として用いた。次いで、定型発達小児を対象に同様の調査を行なった。標準の文字間隔での音読時間で他の文字間隔での音読時間を除した値を用いて分析を行なった結果、実在語では、ある文字間隔を越えると音読時間が悪化するが、非実在語では、文字間隔の影響による音読時間の変化はなかった。この傾向は、小児でも同様に見られた。実在語では、単語を文字列の視覚的まとまりであるVisual Word Form(VWF)として認識し素早く読むことができるが、ある文字間隔を越えるとVWFを認識がしにくくなり、音読時間が増加することが確認できた。また、非実在語では、文字列は意味を持たずVWFがないので、1文字ずつ逐次読みを行うしかなく、文字間隔の変化が音読速度に影響を与えないと解釈できる。これら予備調査により、fMRI実験の刺激設定の基準を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
fMRI実験では、文字間隔の変化が読字のパフォーマンスに影響を及ぼすことを確認した上で、行動データの差に対応した脳活動を検出することが望ましい。日本語において、文字間隔の変化と読字成績の関係を調査した先行研究がないため、fMRI実験の前に行動実験を行い、日本語の読字に文字間隔の変化が影響するのか、確かめる必要があった。平成28年度はこの調査に十分時間をかけ、fMRI実験の準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、ディスレクシア児と定型発達児を対象にfMRI実験を行って、文字間隔の変化が読字中の脳活動に及ぼす影響を調査し、ディスレクシアの読字に関する認知神経学的メカニズムを明らかにする。 その結果を、論文化すること並びに学会で発表することを、計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
最も支出が見込まれる実験協力者及びその保護者への謝礼・交通費の支出が次年度に行われる。そのため、使用額が生じた。また、研究成果の発表等にも、支出を行う計画である。
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次年度使用額の使用計画 |
以下の支出を行う計画である。 fMRI実験協力者への謝礼及び交通費、論文投稿関係費(英文校正代、投稿料など)、学会参加費。
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