研究課題/領域番号 |
15K04570
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研究機関 | 作新学院大学 |
研究代表者 |
田中 見太郎 作新学院大学, 人間文化学部, 教授 (70217024)
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研究分担者 |
日高 茂暢 作新学院大学, 人間文化学部, 講師 (20733942)
高浜 浩二 作新学院大学, 人間文化学部, 准教授 (40616299)
諸冨 隆 作新学院大学, 人間文化学部, 名誉教授 (60003951)
松本 秀彦 高知大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70348093)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心の理論 / ミラー・システム / ミューリズム / 自閉症スペクトラム障害 / 叙述的指さし / 誤信念理解 |
研究実績の概要 |
本研究は平成24~26年度科研費研究(課題番号:24531259、研究代表者:田中見太郎)の継続研究として実施されている。初年度(平成27年度)の研究成果は、前の研究で未発表だった実験結果二つをそれぞれ論文及びポスター発表として公表したもの、前の研究結果を一本にまとめてシンポジウムで公表したものの、2種類に分かれる。 ①ASDに特徴的な障害である「心の理論」について基礎的研究を行うことが、本研究及び前研究の主要テーマの一つである。我々は幼児の無知識理解と誤信念理解を問う新しいタイプの「心の理論」課題を作成し、3~6歳児(定型発達)79名を対象に実験を行い、その結果「心の理論」の発達に他者の行動予測が可能な段階と誤信念理解が可能な段階という異なった二段階があることを確かめた。そしてこの結果を論文の形で発達障害支援システム学研究誌に発表した。 ②ASDのもう一つの障害である叙述的指さしについて、ミラー・システムが関わっているかどうかを探求するのも本研究のテーマである。そこで、演者が明確に伝達意図をもって叙述的指さしを行う動画を作成し、これを観察している際の定型発達成人の脳波を測定した。その結果、ミラー・システムの活動を示す脳波成分ミューリズムの有意の減衰を検出した。この結果は、第33回日本生理心理学会大会で発表した。 ③前研究で行ったの三つの脳波ミューリズムに関する実験のうち二つの実験結果の報告を日本臨床神経生理学会第45回大会シンポジウム「発達障害児の非侵襲的脳機能評価の現在地(これまで)と目的地(これから)」で行った。内容は、【実験1】動作意図および動作対象の有無がMu抑制に反映されるかを検討した実験、【実験2】他者が指差しによって意図をより強く伝達する行為に対してMu抑制が生じるか検討した実験だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、平成24~26年度科研費研究(課題番号:24531259、研究代表者:田中見太郎)の継続研究であるため、平成27年度が初年度であるにもかかわらず、前研究から引き継いだ成果を複数有しており、その成果を公表することができた。 成果は三種であり、一つ目は日本生理心理学会第33回大会でのポスター発表『行為遂行時および他者行為観察時におけるMuリズムの変動―伝達意図を持つ自動詞的行為の検討』(2015年5月24日)、二つ目は日本臨床神経生理学会第45回大会シンポジウム『他者行為理解における脳活動の生理心理学的検討―行為意図性が及ぼすMuリズム抑制への影響―』(2015年11月26日)、三つ目は日本発達障害支援システム学会機関紙『発達障害支援システム学研究』第15号の掲載論文『「知識の呪い」と誤信念理解の関係:「心の理論」の異なった発達段階の存在』である。 特に三番目の成果は査読付き論文であり、初年度の成果としては相当程度に満足できるものであったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
すでに平成27年度中に、新しい実験的枠組みの下で、叙述的指さし理解と自閉症スペクトラム指数AQの相関を調べるための実験を行い、そのデータ収集も完了している。この実験では、実験協力者をAQ高群と低群に分け、それぞれの群の動画観察時の脳波測定を行った。動画課題は、演者が三種類の図形の中の特定の一つを指さし、協力者はどの図形が指さされたかを覚えておくもの、演者が三種類の食物の中の特定の一つをつまんで食し、協力者はどの食物が食されたかを覚えておくものの二種類だった。前者の課題では、演者の指さしは明確な伝達意図を持つもの(叙述的指さし)として観察者には知覚される。これに対して、後者は単に特定の食物が食されているだけである。もしAQ高群と低群で、後者の課題ではミュー抑制に有意差がなく、前者の課題でのみ低群に有意の抑制が検出されれば、ASDの障害にミラー・システムの機能不全が関わっているという「ブロークンミラー仮説」が叙述的指さし理解に関しても成立するということになるだろう。果たしてそのような結果が得られるかどうかについて、これから統計的分析を遂行しようとしている。分析が終了すれば、それをポスター発表の形で取りまとめた上で、第46回日本臨床神経生理学会大会(2016年10月27~29日)で発表する予定である。 また、Onisihi & Baillargeon(2005)が15か月児を対象に行った誤信念課題実験をベースに、新しいミューリズム測定課題を開発し、28年度中に定型発達成人を対象に実施する予定である。現在刺激を作成中であり、作成が完了し次第、実験に入る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度に実施した実験の実験協力者数が10名と、予定していたよりも少なかったため、協力者謝金と実験実施者(研究協力者)である杉野氏への謝金が予定より少額で済んだためである。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に多くの協力者を対象にした実験を実施する予定であり、そのための謝金として使用する予定である。
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