研究課題/領域番号 |
15K04572
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
瀬戸 淳子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 教授 (70438985)
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研究分担者 |
秦野 悦子 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (50114921)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コミュニケーション能力 / 幼児期 / ストーリーナラティブ / 発達指標 / スクリプト知識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は幼児期後期から学童期にかけて発達するコミュニケーション能力の発達評価法を作成し、特別な支援を必要とする幼児の言語発達支援に活用することである。今年度は調査対象を小学生に広げ基礎データを集積した。 1)調査の実施: 学校および保護者の研究協力が得られた小学1、2年生53名に対し、7種類のコミュニケーション能力評価課題による調査、および言語検査語彙などの言語知識水準との関係を分析するための言語検査(PVT-R絵画語い発達検査、K-ABCⅡの語彙尺度課題、言語調整機能の発達テスト(天野 2006))を実施し、結果の整理と発話記録の文字化、およびデータの入力作業を進めた。 2)コミュニケーション能力の発達プロセスの分析と発達評価指標の検討: 幼稚園児の調査をもとに、分析の視点や分析対象児を広げて、以下2つについて分析を行った。①ストーリーナラティブの評価指標の検討:ストーリーナラティブの能力は、5歳後半から6歳前半にかけて急速に高まり、一貫した筋を持った語りへと収束していく様相が示された。ストーリーナラティブ得点、登場人物数、語られる場面数などについて、発達評価指標としての有効性を検討した。②スクリプト知識の発達過程と言語知識との対応関係:スクリプト知識は、ストーリーナラティブよりやや早く、5歳代に発達し6歳で収束する傾向が示された。スクリプト知識得点、補助図版による順序性理解について、発達評価指標としての有効性を検討した。また、スクリプト知識得点と言語知識水準との対応関係を検討した結果、歴年齢の影響を除いてもスクリプト知識得点とPVT-R修正得点の間に弱い相関があることが示された。次年度は小学生の調査データも加えながら、コミュニケーション能力の発達プロセスを明らかにすると同時に発達評価指標についての検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年9月に小学生53名を対象に調査を実施し、基礎データを追加した。現在収集した調査データの整理作業が進行中である。しかし一人につき約1時間の調査となるため、資料の整理に時間がかかっている。また、発達評価指標を作成するために、調査データの分析を進めながら、どのような指標が有効かを検討しているが、7種類の課題共通の発達指標と課題ごとの特殊性に基づく発達指標を、どのように組み合わせるとより発達の実態をあらわせるか等、適切な発達評価指標の抽出と基準作成に時間がかかっている。 ストーリーナラティブの評価指標の検討、スクリプト知識の発達指標の検討、および語彙などの言語能力との対応関係については、これまでに収集した幼稚園児の資料をもとに分析を行い、第58回日本教育心理学会、第28回発達心理学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
1)コミュニケーション能力発達評価指標の作成に向けて、評価指標の抽出と基準値の検討を行なう: コミュニケーション能力発達評価のための7種類の課題(①「何して遊んでいる」(パーソナルナラティブ)、②「どれがいい」(選択場面における理由づけ)、③「まねしてみよう」(文の復唱)、④「どんな順番」(スクリプト知識)、⑤「どうやって遊ぶ」(事象知識)、⑥「どんな絵かな」(絵の叙述)、⑦「どんなお話」(ストーリーナラティブ))についての、4歳から6歳の幼稚園児、および小学1、2年生、計206名を対象とした調査データをもとに、それぞれの課題における発達様相を明らかにしながら、課題ごとに有効な発達評価指標の選定・抽出を進め、各年齢の基準値について検討する。また、コミュニケーション能力評価課題相互間の発達の関係性や、語彙などの言語知識水準とコミュニケーション能力の関係も分析しながら、幼児期から児童期にかけてのコミュニケーション能力の発達の機序とプロセスについて検討する。 2)必要に応じてデータを追加する: 調査データの分析を進めながら、データの偏りがないかを検討しつつ、必要に応じて追加調査を実施しデータを集積する。また、可能な限り、特別支援ニーズ児にも同様の調査を実施しデータを集積すると同時に、集団保育場面でのコミュニケーション行動の観察データ等を収集し、発達特性と保育場面での不適応行動の関連について個別に検討する。 3)以上の研究結果を研究成果報告書にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
9月に調査を実施後、分析を進めながら、さらに追加調査を実施予定であったが、資料の分析に時間がかかり、追加調査の対象者や調査内容についての検討が遅れたこと、また調査先との日程調整が難しく、追加調査ができなかったことが主な理由である。 その他、9月に実施した調査対象校が比較的近隣であり、日程を限定し集中して調査を実施することができたため、当初予定していたよりも調査にかかる旅費等がやや少なかったこともあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度未使用分および29年度分をあわせた研究費の使用計画は以下の通りである。 物品費 約25万:資料分析、編集作業のためPC関連・周辺物品の購入、書籍の購入予定。旅費 約25万:追加調査のための旅費、および研究成果公開、および関連する研究情報収集のための学会出席のための旅費として使用予定。人件費・謝金 約50万:調査の補助、調査の録音録画記録の文字化と調査資料の入力・整理の補助を行う研究補助者への謝金として使用予定。その他 約36万:会議費、調査や報告書のための印刷費と通信費(切手類)等に使用予定。
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