研究課題/領域番号 |
15K04575
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
石川 健介 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 教授 (90319038)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 算数障害 / 算数困難 / 数概念 / ICT / タブレット / 支援 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,前年度に引き続き,開発した数概念を評価するシステム・ソフトウェアを用いて,公立小学校に設置された通常学級の児童を対象にした測定を行った。通常学級に在籍する児童について,主な訴えに「算数に関する困難」を含む児童と,「算数に関する困難」を主訴に含まない児童とに分け,分析を行った。またそれぞれ典型発達の児童との数概念の獲得の程度を比較検討した。加えて,算数困難のある児童の数概念獲得を支援するソフトウェア開発を行った。 まずこれまでに開発したタブレット機器の上で動作する専用のアプリケーションソフトを利用して公立小学校に設置された通常学級の児童を対象にした測定を行った。研究に参加したのは小学1年生から6年生までの児童25名であった。このうち「算数に関する困難」を含む児童は10名であった。タブレット機器のユーザビリティに関しては,これまでと同様,典型発達の児童と比べて,特に問題が生じなかった。刺激の提示がスムーズになったり,提示ミスを防ぐことができたり,といった従来のメリットはそのまま保持された。 次に「算数困難」を訴えに含む児童と含まない児童との比較を行った。NP100 課題については,全体として「算数の困難」を訴えているかどうかに関わらず,線形の表象が成立していることが推測された。NP1000 課題については,まず3年生までは「算数の困難」に関わりなく対数表象モデルが優勢であった。次に4年生に関しては,「算数の困難」を含む児童では対数表象モデルが優勢であった。 他方,推定の精度を表すPAEについては,「算数の困難」を主訴に含む児童の方が,精度の低い推定を行っていた。明確な結論は更なる検討を必要とするが,NP課題における推定精度は,「算数の困難」の有無に関して予測の指標となり得る可能性を示したと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,公立学校の理解を得て,通級指導教室の児童を対象に,数概念を測定するアプリケーションを使用しての測定を行うことができた。公立学校では様々な問題が生じている中で,研究に協力いただける時間が減少しているが,その中でも実施できたことは大きい。また数概念獲得の支援ソフトウェアのプロトタイプの開発は終えて,実施をする段階まで来ているが,学校や家庭における実施機会の確保が課題である。 今後は,引き続き算数障害・算数困難のある児童への参加を広く呼びかける予定である。この点が学校の状況を考えると難しい点であるが,各学校の管理職・担任教諭等の理解得て,実施できるよう努力していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,前年度に引き続き,幼稚園・保育園および小学校の幼児・児童を対象として,数概念を評価する計測システム・ソフトウェアを可能な限り実施し,これまでのデータと合わせて,できるだけ多くのデータを収集する予定である。主たる対象は,小学校低学年・中学年・高学年になる予定である。 平成29年度と同じく,計測を実施し,典型児童と算数困難の児童との比較,算数困難の児童と,それ以外の困難をもつ児童との比較検討を行いたい。各学年における数概念の習得の程度,個々の児童における推定の精度などの指標を検討する。 さらにこれとは別に,数概念の形成を促進する支援ソフトウェアについて評価を行う。今年度,概ねソフトウェアが実行できるところまで来ているので,操作に関してユーザビリティを評価し,実際に算数に困難をもつ児童に使用を依頼することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
・計測機器から得られるデータの分析ソフトウェアが当初の計画より高額であっため,その費用に使用する ・なお,支援ソフトウェアの開発に必要なPCは確保できたため影響はない
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