2019年度は、新規ハードウェアへの対応、OSのバージョンアップとこれにともなうJavaの開発環境のバージョンアップ、関連する不具合を修正し、調整を繰り返して、評価システムを改良した。タブレット機器の画面サイズが徐々に大きくなり、それに合わせる形の調整が必要であった。しかしこの大型化は、試筆版での測定との「見た目」上の差異を縮小する方向に働いているため、測定にとってはこの好ましい傾向であった。 今年度は、この改良した数概念評価システムを使用して、公立小学校の協力を得て、通常学級に在籍する児童を対象に数概念の発達の経過を測定した。これにより、算数困難をかかえる児童との比較が可能となった。 この結果、通常学級の児童では、NP1000の課題において、2年生の段階では対数の表象が優位であるが、4年生の段階で逆転し線形の表象が優位になる。さらに6年生ではすべての児童で線形の表象が優位になった。他方、通級指導教室の児童では4年生の段階まで対数的な表象が優位で、6年生になっても、対数表象の割合が50%であった。さらに数推定の精度を比較すると、NP1000課題において、すべての学年で通級指導教室の児童の精度が低いことがわかった。 支援ソフトウェアは、海外で開発されたものに日本語を移植し、日本語バージョンを作成していた。これまでPC上での動作に関する試行を繰り返し、実行可能になっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の影響で、全国の小学校が休校となり、計画していたユーザビリティ等の評価が実施できていない。新型コロナウイルスの感染状況が収束した後、実施を検討したい。
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