研究課題/領域番号 |
15K04576
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研究機関 | 梅花女子大学 |
研究代表者 |
新澤 伸子 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80553693)
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研究分担者 |
永井 利三郎 プール学院大学, 教育学部, 教授 (50124748)
伊丹 昌一 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90463281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 早期療育 / 親支援プログラム / ペアレント・トレーニング / 効果検証 |
研究実績の概要 |
発達障害児とその親に対する効果的な支援プログラムの在り方についての検討を行うために、A県内の発達障害児療育拠点センターに在籍する児童の保護者459名に対して、「発達障がい児・者をもつ親のストレッサー尺度」(山根、2013)、「家族の自信度アンケート」(岩坂ら、2012)、「子どもの強さと困難さアンケート」(SDQ)を用いて介入の前後で調査をおこなった。回答率88.2%、有効回答率は81.0%であった。発達障害を有する児童の平均年齢は5.2歳(±1.48)であった。ペアレント・トレーニング(以下ペアトレ)を受けた保護者は61名(18.6%)、受けていなかった保護者は267名(81.4%)であった。結果は、「ストレッサー尺度」ではペアトレを受けた群ではすべての因子及び合計得点において有意に改善が見られた。ペアトレを受けていなかった群では「周囲の理解のなさ」因子においては、前後の変化に有意差が見られなかったが、その他の3因子および合計得点においては有意な改善が見られた。「家族の自信度アンケート」では、どちらの群も前後で合計得点に有意に自信度の上昇を認めた。SDQの得点では、ペアトレを受けた群では前後で有意な変化はなかった。ペアトレを受けなかった群ではサブカテゴリーの「行為」、「多動/不注意」、「合計得点」で有意な低下(改善)がみられ、「向社会性」では有意な上昇がみられた。以上の結果から、ペアトレの受講の有無によらず、発達障害児療育拠点センターが従来から行ってきたTEACCHプログラムの考え方に基づく療育の効果について、保護者のストレス度と自信度、保護者の評定による子どもの行動において有意な改善が認められたと言える。従来の療育に加えて、ペアトレを実施した群においては、実施しなかった群と比べて、親のストレス度と自信度において大きな改善が認められたことは、従来の療育プログラムに加えてペアトレを実施することの有効性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画より全体として約2倍のデータ収集を行い、27年度に実施したアンケートの集計と分析を終えることができた。当初、ペアレント・トレーニングを実施した時期の違いも含めて4群比較をする計画であったが、療育開始前にペアレント・トレーニングを実施した対象者からのデータを回収することが困難であったため、ペアレント・トレーニングを並行して実施した群と従来の療育のみ実施した群との2群比較をおこなった。一方、当初実施予定の「発達障がい児・者をもつ親のストレッサー尺度」(山根、2013)と「家族の自信度アンケート」(岩坂編著、2012)に加えて「子どもの強さと困難さアンケート」(Strengths and Difficulties Questionnaire)も実施し、子どもの行動の変容についても調査した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、27年度の研究成果を中間報告として、日本特殊教育学会で発表予定である。また、「発達障害児療育拠点事業の長期的予後調査」のための情報収集および予備調査のために、9月に米国ノースカロライナ大学のTEACCH Autism Programの年次大会に参加し、TEACCHで行われている長期予後調査について情報収集を行う。さらに、予備調査の調査項目の策定のため、2005年~2007年の間に療育拠点で療育を受けた児童の保護者の内、調査協力に了解の得られた保護者数名に面接調査を行う。予備調査の調査項目を策定し、2005年~2007年の間にA療育拠点センターで療育を受けた児童約150人の保護者に対して、A療育拠点センターから調査用紙の送付を依頼する。データの回収率、調査項目への回答の分布および自由記述の内容分析に基づき、本調査にむけて、調査方法、調査内容の検討を行う予定である。
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