特別支援学校の重複障害クラスの授業参観とヒアリングを通して、「絵合わせ」や「型はめ」などのマッチング学習において、図形をはめ込むことが困難な児童に適した教材への期待、従来の教材が平面的な対象物にしか適用できない問題を解決したいというニーズを発掘した。これらのニーズに応えるため、児童らが日常的に使用しているぬいぐるみなど、不定形な立体物も使用可能な実用性の高いマッチング学習教材を開発した。無線によるICタグの認識、マッチング判定、音声再生、画像表示までの要素技術検証のための装置を作成し、プロトタイプでの課題であった事前準備にかかる作業量を軽減するという目的を達成した。さらに、発展的な学習として、仲間分け学習、文字学習へと展開できるようにシステムの拡張を行った。仲間分け学習においては、提示された複数の対象を2つのグループに分類する作業を児童が行う。同一の物体とは限らないため、マッチング学習と比べると難易度が高くなる。また、文字学習においては、提示された写真や物体に対してひらがなを一文字ずつ選択して解答することで、物とことばの関係を学べるようにした。ある児童についてはマッチング学習や仲間分け学習について概ね正答できることから、2文字での文字学習へと発展させている。学習回数、解答時間、正答率などについて、1文字目、2文字目と分けて重回帰分析を行った結果、対象児童のひらがなの認識に関する特性がより明らかになった。また、その結果を3次元グラフで表示することで、学習の効果を直感的に分かり易く可視化することに成功した。開発システムを利用することで、対象児童生徒の学習の成長を客観的、かつ、定量的に捉えることが可能となった。
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