研究課題
当該年度は、昨年度選定した脳性麻痺児における読み書き・算数能力の強みと弱みに関する認知神経学的評価を実施し、加えて画像データ収集を進めていくことを目標とした。評価およびデータ収集を実施したのは、粗大運動能力分類システムでレベルⅠ~Ⅳの脳性麻痺児13名(男性8名、女性5名)と健常対象児6名(男性3名、女性3名)であった。認知神経学的評価として、WISC-4、読み検査課題、算数障害の症状評価のための課題・算数思考課題、Developmental Test of Visual Perception-3 (DTVP-3)、Strength Difficulty Questionnaire (SDQ)などを実施した。同時期に頭部MRIによってT1WIおよびDTIの全脳撮像をおこなった。また、脳性麻痺児については、姿勢・運動機能の基礎データとして、手指操作能力分類システム(MACS)、コミュニケーション能力分類システム(CFCS)、粗大運動能力尺度(GMFM)、子どものための機能的自立度評価法(Wee-FIM)を実施した。これらの収集したデータをもとにデータベースを構築していった。さらに、学校教育における実際の困難感を明らかにするために、特別支援教育の受講状況と個別支援の内容、および本人や家族の困り感について詳細を聴き取った。特別支援学校並びに特別支援学級担任や校長・教頭と面談し、学校での特別な配慮の状況を聴き取るとともに、脳性麻痺のある子どもたちの個々の認知面における特性を伝えて理解を促し、学校での具体的な支援に関して連携できる関係を築いた。また、脳性麻痺児の運動機能と認知に関する特性への理解を深めるために国立障害者リハビリテーションセンター神経筋機能障害研究室河島則天室長に来院頂き、評価・検討を行った。
3: やや遅れている
本年度の目標であった脳性麻痺児における認知神経学的評価および神経イメージングの撮像を実施し、データベース構築を進めることができた。また、健常対象者の対象登録を進め、登録者の半数に検査を実施することができた。対象を小学生としているため長期休みでの検査に集中して実施することとなったが、日程調整がつかないなど登録者を十分に確保することができなかったため、次年度に繰り越してデータ収集を実施する。また、脳性麻痺児の診察において、眼球運動機能や視機能の問題が潜在することが明らかになったため、考察に必要なデータを別途収集している。
今年度の夏休みまで研究対象として参加登録を追加募集、データ収集・集積を完了し、9月より構築したデータベースをもとに、統計学的解析を実施し、PVLを伴う脳性麻痺児の認知機能特性と脳構造特性との関連を明らかにし、特異的発達障害との異同を考察し、特別支援教育における効果的な個別的配慮について検討し、結果を公表していく。
研究対象者を小学生としているため長期休みでの検査に集中して実施することとなり、年度をまたぐ春休み中にも検査実施予定が入った。計画で予定した対象者数に登録数が達しなかったため、次年度の夏休みまでデータ収集を延期した。効率的なデータ収集のためにモバイル型コンピュータや検査キット等を購入する予定である。
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小児内科
巻: 49 ページ: 639-644
日本小児科学会雑誌
巻: 121 ページ: 1289-1291