研究課題/領域番号 |
15K04590
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
河内 岳大 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (70447853)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ表面・界面 / 自己組織化単分子膜 / 有機-金属接合 / 分子配列 / 電荷輸送 |
研究実績の概要 |
前年度に開発したマイクロ波加熱による迅速合成法を駆使して、電子受容体であるビオローゲン(1,1’-二置換-4,4’-ビピリジニウム塩)を樹状に連結した分子傾斜構造の頂点部もしくは基底部に、電子供与体であるピレンを導入した。世代の異なる一連の分子群について、良溶媒中でのレーザー励起時間分解分光測定を行った。その結果、樹状構造の世代の増加に従い、ユニット間の自己電子交換(self-exchange)によりピレンへの逆電子移動が抑制されることがわかった。第3世代のものでは50 ps以上の寿命を持つカチオンラジカルの濃度が約10倍にもなり、想定した樹状構造によるキャリア輸送が確認できた。さらに興味深いことに、光合成中心と同様、隣接したビオローゲン間のLUMO軌道を介した超交換相互作用に基づく長距離輸送を示唆する結果が得られ、多数の樹が寄り集まった構造の優位性も示唆された。 前年度において、ビオローゲン樹状構造にメルカプト基を位置選択的に導入することでレドックス分子の密度勾配を精密に制御した自己組織化単分子膜(SAM)を金基板上に作製することに成功している。これらのSAMについて、電気化学測定や液状インジウム-ガリウム合金を電極としたJ-V測定、コンダクティブAFM測定などを行い、有機分子密度勾配の向きによる整流性について検討したものの、明確な差を議論するには至らなかった。より精密な電気化学測定を行うため電極に単結晶金を用いるなど、検討を進めている。また、表面被覆構造についても詳細な知見を得るため、高分解能走査型トンネル顕微鏡観察ならびに硬X線光電子分光測定に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の異動により年度後半の研究進捗は鈍化したものの、前年度に前倒しで検討を進めていたこともあり、全体としては予定通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
溶液中での光化学により、樹状構造が電荷輸送に及ぼす特異性並びに優位性を確認することができた。しかしながら、金属-有機接合界面として集積化した円錐型傾斜接合では、有機分子の密度勾配の向きによる整流性を明確化することができていない。そこで、発生キャリアの少ない実験系を構築する目的で、円錐型傾斜接合をナノ構造化した金属表面につくり込み、有機分子ユニットの空間分布勾配が動作原理として機能するプラズモニックデバイスの試作に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動により年度後半における研究時間の確保が難しくなったため、機器の購入計画を変更した
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次年度使用額の使用計画 |
異動後、速やかに機器を購入し、研究を遂行する
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