研究課題
有機分子を基盤としたエレクトロニクスは、化学の領域から技術の領域へと飛躍的な発展を遂げており、それに伴って分子配列を精密に制御することの重要性が増している。しかし、計算化学や従来の「超分子シントン法」のみでは、要求される精度を達成することは容易ではない。そこで本研究では、より高次の分子集合モチーフを用いて、π電子系機能分子が精密に配列制御された分子集合体を構築することを目的とする。すなわち、「高次超分子シントン法」の探求と確立による、π電子系機能分子の精密集積プログラミングである。本年度は、パイ共役部位に非平面のバッキーボウル(スマネン)骨格、および窒素原子を含むヘテロパイ共役電子系のヘキサアザトリフェニレン骨格の周囲6か所にカルボキシフェニル基を導入した分子(それぞれCPSMおよびCPHAT)を合成し、それらが高次の超分子シントンによって連結されたネットワーク構造の構築を行った。X線構造解析に加え、熱重量分析、示唆操作熱量分析によって集積構造の熱力学を解明した。CPHATについては固体蛍光を測定するとともに、蛍光量子収率および蛍光寿命を決定した。興味深いことに、CPSMは、既に報告しているPhTモチーフの他に3(1)ノットトポロジーを有する水素結合モチーフをもつ2重層状構造の結晶も得られた。表面に凹凸をもつシートが積層した本構造は、加圧によってシート間隔が縮小し、970 MPa下では11%の縮小が観測された。またCPHATは空孔から溶媒分子を除去した後も単結晶性を保ち、339℃まで構造を維持する極めて安定な多孔質構造体を与えることが分かった。さらに熱湯中や熱塩酸中でも分解することなく構造が維持される。単結晶を用いた蛍光分析から、構造体は異方的な蛍光発光を示すことが明らかとなった。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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