| 研究実績の概要 |
本研究の目的は，巨大な表面増強ラマン散乱（SERS）を生み出すナノ粒子二量体アレイの高効率生成技術および高速高感度SERS分光分析技術を基盤として，多成分溶液に含まれる分子を１分子ずつラマン分光検出することにより，溶液中に含まれる分子の種類および個数（濃度）を同定する多成分定量SERS分光分析技術（デジタルSERS分光分析）を構築することである。
これまでに，単一金ナノ粒子二量体を用いて1分子のSERS計測が可能であることが明らかになっている。平成29年度は，目的である多成分定量デジタルSERS分光分析実現に向けて，原理実証を進めた。単一金ナノ粒子二量体をレーザスポット径（約2μm）以上の間隔（約5μm）で多数配列した分析チップを作製した。その後，単一金ナノ粒子二量体ごとに1分子を検出する実験を行った。本研究で作製した構造は単一金ナノ粒子二量体が向きをそろえて配列されており，逐一入射光偏光方向と二量体の向きをそろえる必要がなく効率的な実験が可能であるとともに，分析にかかる時間を大幅に短縮することができた。検出対象分子を4,4’-ビピリジンおよびアデニン分子として，実験にはそれらの混合水溶液を用いた。
本実験では，単一金ナノ粒子二量体ごとに1分子ずつ2種類分子を検出できることを明らかにした。1つの単一金ナノ粒子二量体からは1種類の分子しか検出されることはなく，二量体のナノギャップに分子が捕捉される可能性が得られた。本研究ではラマンピークとノイズを判別するアルゴリズムを構築するとともに判別閾値を明らかにした。これにより大量のデータから2種類分子の同定および検出割合を自動で算出することが可能となった。
これらの結果より，従来SERS分光分析では不可能であった多成分定量分析を可能とし，クロマトグラフィなどの他の技術と比べて格段に高感度かつ迅速な化学分析技術を実現できると期待される。
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