研究課題
テラヘルツ(THz)波領域において、金属テーパー導波路におけるプラズモン超集束を第一に検討すべき構造は、実用的な観点を重視すれば、金属平行平板付きV溝テーパー導波路である。金属V溝テーパー導波路により回折限界を超えて集束された直線偏光THz波は、平行平板部で高強度電場を発生させることが可能である。この機構を利用すれば、平行平板の部分に非線形光学結晶を挟み込むことにより電気光学過程に基づいた、高感度なアンテナを実現できるからである。この新規なアンテナを、ここでは電気光学アンテナと呼ぶことにする。従来、THz波領域における金属導波路の理論は、マイクロ波技術の影響から、金属を完全導体として扱う簡便な方法が取られていた。しかし、金属導波路が波長寸法より小さい場合には、THz波の金属中への侵入長が無視できなくなり、金属の誘電率を考慮した取扱いが必要となる。本研究では、研究代表者が提案した準変数分離に基づいて金属V溝テーパー導波路の数理解析理論を構築し、実験に応用することが目的である。最終年度である本年度は、金属平行平板付きV溝テーパー導波路について、数理解析の点で再検討し、実験の点では電気光学アンテナによるTHz時間領域分光装置の光学系を組んだ。数理解析の点においては、昨年度の理論に計算ミスが見つかり、アルミニウムの誘電率(-32,000+670,000 i)を用いた計算と、金属を完全導体として扱った計算結果との間に十分な差異が認められる結果を得た。また、平行平板の部分に非線形光学結晶を挟み込んだ場合の電場増強度も計算できるようになった。一方、実験の点においては、電気光学アンテナを作製し、THz時間領域分光装置に必要な部品を準備した。
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