排ガス規制により究極的な浄化が求められる中で一層の浄化性能向上には、セリアなどの酸化物基板と浄化触媒となる貴金属ナノ粒子の電子構造的な理解に則った触媒反応の理解を課題とした。貴金属ナノ粒子の電子構造的特性と酸化物担持基板との相互作用等について光電子分光実験を中心とする研究を展開した。放射光光電子分光実験との適合性から、清浄な貴金属ナノ粒子を「その場」で創製できる「ガス中蒸着法」を採用し、共同利用放射光施設に装着可能なコンパクトな創製装置を開発した。ナノ粒子の表面および内部を観測できる軟X線光電子分光実験を行った。その結果、大気暴露によりRhナノ粒子は酸化し初期段階ではRh2O3、1ヶ月の暴露によりRhO2へと酸化が進むことを確認し、酸化は表面から内部に進行するものの、粒子内部にはまだRh金属状態が残されていた。一方、RhO2よりも酸化の進んだ状態がRhナノ粒子表面から十分内部で観測され、酸化物担持基板界面からの酸化によるものと解釈できた。NOおよびNOと酸素の混合ガスの吸着について、同様に実験した。NOの吸着では、NOだけでなくNO2、Nの吸着も観測され、ナノ粒子表面でNOが乖離吸着している様子を観測することができた。また酸素との混合ガスの吸着では、NO2のみの吸着となり、一方、Rh表面の酸化も進んでいる状況から、酸化されたRh表面ではNOの吸着が低下していることを確認できた。酸化物基板とナノ粒子の相互作用を調べるために、SiO2とCeO2の二種類の基板で実験をしたところCeO2基板の方が酸化が進んでいる様子を確認できた。これらの現象の理解のために、Rh4原子のクラスターが酸化物基板に担持している単純な吸着モデルを想定し、第一原理計算により、酸化還元の反応エネルギーを求めたところ、実験を説明できる結果を得ることができた。モデルに基づく触媒開発の1例を示すことができた。
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