研究課題/領域番号 |
15K04602
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高瀬 浩一 日本大学, 理工学部, 教授 (10297781)
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研究分担者 |
清水 智弘 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80581165)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抵抗変化メモリ / フィラメント閉じ込め効果 / 絶縁体ナノワイヤー作成 / ナノワイヤーメモリ / スイッチング特性 / 電解メッキ法 / スイッチング電圧の再現性向上 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究で得られた知見を基にして平成28年度は、アルミニウムを陽極酸化することで細孔径が40nm程度のものを準備し、この細孔へのニッケルの埋め込みを電解メッキ法で行った。これにより、ナノ細孔にニッケルナノワイヤーが出来上がる。電流-電圧特製の評価の際にナノワイヤー周りのアルミナが邪魔になるので、これを化学的手法により除去し、ニッケルナノワイヤーを露出させた。このナノワイヤーを酸素プラズマにより酸化し、酸化ニッケルをニッケルナノワイヤー上に形成した。作成されたNiO/Niナノワイヤーを透過型電子顕微鏡により観察したところ、酸化時間が1分、3分、5分と長くなるにつれて、膜厚も厚くなる傾向が見られた。また、この観察により酸化ニッケルはアモルファス状になっていることが確認された。これは、高いエネルギーをもった酸素ラジカルがニッケルに打ち込まれるため、もともと規則正しい配列であったものが、ランダムになったためであると推察される。 さて、これらの電流-電圧特性を評価した結果、酸化時間が1分の試料では、明瞭なスイッチングが観測されたものの、スイッチング電圧のばらつきは、やや大きなものであった。酸化時間が3分になるとこれがスイッチング電圧のばらつきはある程度抑制され、フィラメントの閉じ込め効果を確認できた。5分の試料では、再びスイッチング電圧のばらつきは大きくなった。これは、酸化時間とともに膜厚が厚くなることで、フィラメントの閉じ込め効果が小さくなったせいだと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度と28年度にわたり、陽極酸化ポーラスアルミナのナノ細孔を用いて金属ナノワイヤーを作成し、アルミナ除去後のナノワイヤーを酸化することで絶縁体ナノワイヤーを作成してきた。その結果、通常の陽極酸化条件で得られる40nm程度のナノワイヤーでは、酸化時間が長くなると、酸化による体積膨張が起こり、ナノワイヤー同士が密着してしまう結果となった。これを防ぐために、ナノ細孔の間隔が大きくなるような条件を探し出したが、同時に、ナノ細孔径も大きくなり、100nm程度となってしまった。これは、本来のフィラメントの閉じ込め効果を狙う目的とは大きく外れてしまっており、ナノワイヤー作成方法の見直しが必要である。 単結晶ナノワイヤー作成に関しては、本年度、薄膜作成装置の排気ユニットを更新することができたので、VLS法での試料作成を試みている。本装置の排気装置は、ターボ分子ポンプであり、このため、高い酸素分圧には対応できない。これまでのところ、酸素分圧を調整しながら成膜を試みているが、ナノワイヤーの作成には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.多結晶ナノワイヤー作成 従来の陽極酸化条件では、本研究で計画しているナノワイヤーの形成は困難なようであるので、「ナノインプリント法」を用いて、あらかじめ凹みをアルミニウムにつけておき、それを陽極酸化することで、十分な間隔をもった金属ナノワイヤーアレイを作成する。この金属ナノワイヤーを酸化することで、徐々に金属部分を減らしてゆき、フィラメントの閉じ込め効果を確認したい。 2.単結晶ナノワイヤー作成 VLS法によるナノワイヤー作成には、高い酸素分圧が必要である。まずは、ターボ分子ポンプの限界圧力までで試料作成を試みたい。もし、うまくいかない場合は、金属を亜鉛に変更し、簡便な横型電気炉を使用したVLS専用装置を開発することで、単結晶ZnOナノワイヤーを作成する。 ここまでは、どれも基板に対して縦方向の動作であったが、フィラメント形成状況の確認などのためには、横方向でスイッチングする素子も重要である。そこで、ポリスチレン球を用いて、金属ナノ電極を形成し、金属電極の上から絶縁体を体積させることで横型素子を作成する。これにより、絶縁体直上からのフィラメント観察が可能となるので、AFM等を用いてフィラメント観察を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
真空蒸着装置を用いたVLS法により単結晶ナノワイヤーを作成予定であったが、遷移金属蒸発源である電子ビーム蒸着装置が故障し、このため関連消耗品費の支出が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に電子ビーム蒸着装置の修理の捻出が可能になるので、修理が完了し次第、VLS法による絶縁体単結晶ナノワイヤーの作成を試みる。これに際し、関連消耗品費の購入にこの費用を充てることを予定している。
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