研究課題/領域番号 |
15K04603
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
高田 啓二 関西大学, システム理工学部, 教授 (50416939)
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研究分担者 |
内野 喜一郎 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (10160285)
梶山 博司 徳島文理大学, 理工学部, 教授 (80422434)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リチウムイオン二次電池 |
研究実績の概要 |
リチウムイオン二次電池内のリチウムイオンの動きを非破壊高分解能計測する研究は順調に進展している。 これまでは、電極活物質特にグラファイトへのリチウムイオンの吸蔵放出に伴う体積変化を捉え、イメージングしてきた。当初は、リチウムイオンの吸蔵放出に伴う活物質の体積変化しか捉えることができないと考えていた。しかし、体積変化が極めて小さい活物質を塗布した電極の観察では、活物質粒子間の電解液流動と考えられる画像が取得された。さらに観察を続けると、電解液のドライアウトと思われる現象が進行する様子が捉えられた。 リチウムイオン電池のエネルギー密度向上のためには、塗布される活物質層を可能な限り厚くする必要がある。しかし、厚い活物質層への電解液の浸透が難しくなる。また、充放電に伴うリチウムイオン濃度変化を緩和するための電解液の流動も必要である。このために、活物質粒子の層内の分散が重要な技術課題として活発に研究されている。 本研究成果は分散技術の結果を検証し、その検証結果を参考にさらなる技術改良を行うために不可欠な評価方法を提供したと考えられる。 一方、液体電池に代わる新たな電池として、全固体電池が注目されている。 全固体電池の最重要課題は、界面および粒子間のイオン伝導である。我々は、イオンの吸蔵放出に伴うバンド構造変化を2通りの方法で捉えることにより、活物質‐固体電解質界面でのイオン伝導の分布を画像化した。ひとつは、リチウム組成に依り透明と黒色とに変化するチタン酸リチウムを光学顕微鏡により観察する手法、もう一つは、エネルギーギャップ変化を光誘起歪としてプローブ顕微鏡で捉える手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
リチウムイオン二次電池内のリチウムイオンの動きを非破壊高分解能計測する本研究において、予想外の現象が観察された。 これまでは、電極活物質へのリチウムイオンの吸蔵放出に伴う、活物質の体積変化しか捉えることができないと考えていた。しかし、体積変化が極めて小さい活物質(コバルト酸リチウム等)を塗布した電極の観察では、活物質粒子間の電解液流動と考えられる画像が取得された。さらに観察を続けると、電解液のドライアウトと思われる現象が進行する様子が捉えられた。 電解液のドライアウトは、電池劣化の重要な要因である。特に、高エネルギー密度化がはかられるシリコン負極のような合金系材料では、イオン吸蔵放出に伴う体積変化が大きいために、ドライアウトが深刻な問題となっている。 この現象の把握は、本問題の解決と電池性能向上に寄与すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
活物質層中の電解液流動とドライアウト計測を発展させる。 現在は、一部の酸化物活物質での測定であるので、計測の深化とともに、合金系活物質へと拡張する。 一方、重要性を増しているのが全固体電池である。そのイオン伝導を詳細に調べることは、電池の実用化に欠かせない。この計測法も確立されつつあるので、さらなる研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
活物質層中での電解液流動が捉えられ、さらに全固体電池の界面および粒界でのイオン伝導の高分解能計測の見通しが得られたので、研究を1年間延長する必要が生じた。 そのための材料費購入のために資金が必要となったために、次年度に一部資金を繰り越した。
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