研究実績の概要 |
白金は,自動車排ガス触媒,光触媒,酸化触媒,燃料電池電極等,幅広い分野で優れた活性・機能を示すことが報告されている。白金を上記のような分野へ応用する際には,H2PtCl6,Pt(NH4)2Cl4,Pt(NH3)4(NO3)2などの白金種を酸化物や炭素材などの固体表面へ含浸担持し,焼成処理を施すことが多い。焼成処理の過程で,白金種に含まれているアンモニウムイオンや塩化物イオンなどは脱離し,Pt(0)やPtOxなどの不溶性粒子が生成する。焼成や反応条件によっては,これらの粒子が凝集・シンタリングし,活性低下を引き起こすことも報告されている。これに対し,申請者が開発してきたケギン型二核白金(II)種配位ポリオキソメタレート(Cs3[PW11O39{cis-Pt(NH3)2}2],Cs4[SiW11O39{cis-Pt(NH3)2}2],Cs4[GeW11O39{cis-Pt(NH3)2}2])は,分子性の金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレートの骨格構造の一部を位置選択的に欠損させ,そこへ[cis-Pt(NH3)2]2+を配位させることで,安定かつ均一な白金(II)サイトを保持することができる。これらの白金化合物を空気中,300~500℃の温度範囲で焼成処理すると,白金サイトに配位したアンモニア分子の脱離が進行し,水溶性の新規白金種配位ポリオキソメタレートが得られる。その際,不溶性粒子の生成は観測されない。焼成処理により得られた白金化合物の中でも,Cs4[SiW11O39{cis-Pt(NH3)2}2]およびCs4[GeW11O39{cis-Pt(NH3)2}2]を焼成することで得られた水溶性白金固体は,酸化チタン共存下での可視光照射による20%メタノール水溶液からの水素発生に対し優れた触媒活性を示し,12時間後の白金一原子当たりのターンオーバー数は約6500に達した。
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