研究課題/領域番号 |
15K04608
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
原田 雅史 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (90314525)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / マイクロ波合成 / 複合酸化物ナノ粒子 / 混合フェライト / 磁化曲線 / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
混合フェライトナノ粒子は混合する金属元素の組み合わせにより、多様な磁気特性が発現するとされており、その要因の一つにスピネル構造内での各金属イオンの配置の仕方の違いが考えられる。そこで本研究では、4種類の金属を用いて複合酸化物ナノ粒子(混合フェライトナノ粒子)を合成し、構造解析を行うとともに磁化を測定して各混合フェライトナノ粒子の磁気特性を比較した。さらに各金属の混合フェライトナノ粒子のスピネル構造内のカチオンの分布の仕方(反転度)を定量的に調べ、結晶構造と磁気特性との関連について検討した。 平成28年度は、27年度に構築したフロー系ナノ粒子合成システムとマイクロ波照射装置を組み合わせた新たなシステムを用い、複合酸化物ナノ粒子(混合フェライトナノ粒子MFe2O4, M = Mn, Co, Ni, Zn)を合成することができた。マイクロ波照射は出力275Wのシングルモードのマイクロ波合成装置を用いて行い、粉末X線回折(XRD)、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)観察、電子線回折(ED)、電子線エネルギー損失スペクトル(EELS)測定およびEXAFS測定による構造解析と、振動試料型磁力計(VSM)測定による磁性の評価を行った。 混合フェライトナノ粒子のVSM測定から、ZnFe2O4ナノ粒子の磁化曲線ではほとんど磁化が現れなかったことから、反強磁性体であるか、または小さく現れた磁化から磁性をわずかに持っていることが考えられた。一方、MnFe2O4, CoFe2O4, NiFe2O4ナノ粒子は強磁性体の磁化曲線のようなs字型のループであるが、バルクで現れるヒステリシスや残留磁化を持たないナノ粒子特有の磁化曲線であった。これらフェライトはバルクでは強磁性体であるが、ナノ粒子になると外部から磁場がかけられると磁化が現れ、磁場が取り除かれると磁化が失われる超常磁性を示すと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フロー系ナノ粒子合成システムを用いたマイクロ波急速加熱での複合酸化物ナノ粒子(混合フェライトナノ粒子MFe2O4, M = Mn, Co, Ni, Zn)の合成はおおむね順調に進んでいる。しかし、合成温度が150~200℃と比較的高温のため、保護剤として粘度の高いフォスフィドTOPOを用いると、マイクロリアクターの閉塞が生じてしまい、現状ではナノ粒子の合成に成功していない。今後は、この問題点を解決することでマイクロリアクターとマイクロ波を組み合わせた大量合成手法を確立することを目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロリアクターやマイクロミキサーの形状や構造を再検討すること、あるいはマイクロミキサーとマイクロ波を組み合わせる合成システムを構築することにより、生成物による閉塞が抑制された複合酸化物ナノ粒子の大量合成手法を確立する。さらに得られた複合酸化物ナノ粒子の構造と磁気特性の関連を系統的に調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロリアクターの閉塞が生じ、現状では複合酸化物ナノ粒子の合成に成功していない。そのため、液相in-situ EXAFS&SAXS測定用の金属製の光学セルを設計、製作できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、反応系を変えることで、マイクロリアクターの閉塞が起こりにくい合成に着手するとともに、液相in-situ EXAFS&SAXS測定用の金属製の光学セルを設計、製作する予算に充てる。
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