研究実績の概要 |
混合フェライトナノ粒子は混合する金属元素の組み合わせにより、多様な磁気特性が発現する。4種類の金属を用いて混合フェライトナノ粒子を合成し、構造解析を行うとともに磁化を測定して各混合フェライトナノ粒子の磁気特性を比較した。さらに各金属の混合フェライトナノ粒子のスピネル構造内のカチオンの分布の仕方を定量的に調べ、結晶構造と磁気特性との関連について検討した。 フロー系ナノ粒子合成システムとマイクロ波照射装置を組み合わせた反応システムを構築し、混合フェライトナノ粒子(MFe2O4, M = Mn, Co, Ni, Zn)を合成することができた。粉末X線回折(XRD)、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)観察、電子線回折(ED)、電子線エネルギー損失スペクトル(EELS)測定およびEXAFS測定による構造解析と、振動試料型磁力計(VSM)測定による磁性の評価を行った。各種構造解析から混合フェライトナノ粒子はスピネル構造を有し、混合フェライトナノ粒子のVSM測定から、ZnFe2O4ナノ粒子の磁化曲線ではほとんど磁化が現れなかったことから、反強磁性体であるか、または小さく現れた磁化から磁性をわずかに持っていると考えられた。一方、MnFe2O4, CoFe2O4, NiFe2O4ナノ粒子は強磁性体の磁化曲線のようなS字型のループを描くが、ヒステリシスや残留磁化を持たないナノ粒子特有の磁化曲線であり、これらフェライトはバルクでは強磁性体であるが、ナノ粒子になると外部から磁場がかけられると磁化が現れ、磁場が取り除かれると磁化が失われる超常磁性を示した。平成29年度は、低温でSQUID測定を行い、試料の磁化の磁場依存性や温度依存性を測定し、零磁場冷却(ZFC)と磁場中冷却(FC)における磁化の温度依存性で見られるブロッキング温度や磁気異方性定数を評価することができた。
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