研究課題/領域番号 |
15K04613
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
白石 幸英 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 教授 (60289303)
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研究分担者 |
浅野 比 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 講師 (60389153)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 高分子錯体 / ナノ粒子 / 熱電変換材料 / 有機熱電材料 / ゼーベック係数 |
研究実績の概要 |
世界の総エネルギー消費の約9割は、化石資源に依存しているが、その約半分が利用されず排熱として失われている。特に、排熱の大部分は200℃以下の低温排熱である。この低温排熱の有効利用法の一つとして、熱から電力を取り出す熱電変換技術が期待されている。これまでの研究で、アーク法で作られたカーボンナノチューブを主体とした有機/無機ハイブリッド熱電材料について報告している。CNT複合熱電材料の性能は、CNTの種類に依存する。本報告では、安価で大量に生産可能なスーパーグロース法で作られたSGCNTと種々の導電性ナノ粒子を用いた複合材料の熱電特性について報告する。 CNT複合材料を印刷法で製膜するには、高分子材料との複合化が必要である。汎用性高分子のポリ塩化ビニル(PVC)は優れた製膜性を持つ一方で、絶縁体であるため導電性を低下させる。この複合体に、CNTのキャリア移動を促進するパラジウムナノ粒子(Pd NP)や、高分子錯体ナノ粒子(nano-PETT)を添加した複合膜の熱電特性を測定した。熱電材料の性能は、熱起電力を示すゼーベック係数S、導電率σから求められる熱電出力因子PF (PF=S2σ)で評価した。導電性のあるナノ粒子を添加することで、複合膜の電気伝導率が向上した。これは、導電性ナノ粒子によってSGCNTのキャリア移動が促進されたためである。特にnano-PETTは、SGCNTの分散性を向上させる作用があり、緻密なCNTのネットワークを形成することによって、大幅な電気伝導率の向上が得られた。高価で性能の高いArc-CNTを用いたnano-PETT三元複合膜のPFが58.6 μW m-1 K-2であるのに対して、SGCNTを用いた系は、86.6 μW m-1K-2と同等以上の複合材料の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スーパーグロース法で作られたSGCNTと汎用性高分子および、高分子錯体ナノ粒子(nano-PETT)の三元複合膜で、高い成膜性を示した。この有機熱電材料の熱電特性は、昨年度の系よりも大幅な電気伝導率の向上が得られ、熱電出力因子PFが格段に向上した。
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今後の研究の推進方策 |
1)本系で用いた汎用性高分子は耐熱性が低く長期間高温での使用が期待できない。来年度は、耐熱性高分子を用いハイブリッド熱電変換罪障の創製を目指す。 2)熱電変換デバイスは、p型とn型の半導体の両方の利用が好ましいとされている。しかし、キャリアが電子であるn型の有機半導体は、一般に空気中で酸化されやすく、報告が少ない。そのため、n型で空気や熱に安定な実用的有機熱電変換材料が求められている。最終年度はn型有機熱電変換材料についても取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度5月に、新エネルギー・産業技術総合開発機構の「低炭素社会を実現するナノ炭素罪障実用化プロジェクト」:スーパーグロース法単層CNTを用いた有機熱電変換素子の開発(中核機関 日本ゼオン)に、研究分担者として平成27-28年度参画させて頂くこととなり、試薬や実験器具など共通化できるところがあり、予算の繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
上記プロジェクトは、平成28年度末で完了したため、平成29年度は当初の使用計画に基づき予算執行を行い、本科研費プロジェクトの集大成を図る。
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