研究課題/領域番号 |
15K04618
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
遠田 義晴 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (20232986)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シリコン酸化膜 / 熱脱離 / ボイド / ナノ構造 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
無酸素雰囲気中でシリコン酸化膜を加熱すると、酸化膜が不均一に熱分解脱離し、酸化膜にボイドと呼ばれる貫通穴が形成されることが知られている。さらに本申請者により、ボイド形状がシリコン基板の面方位を反映すること、ボイド内部には加熱冷却プロセスに対応したシリコンナノ構造が形成されること、初期ボイドの発生は加熱開始直後に発生することなどが明らかになっている。本研究は、これまでの研究成果を踏まえ、初期ボイド発生やシリコンナノ構造形成の物理的起源や発現機構を究明し、さらに量子効果半導体デバイスとして発展可能なシリコンナノ構造形成・制御のための基礎的な技術開発を目的とする。以下に、当該年度に得られた研究成果をまとめる。 1.加熱装置の整備 既存の走査型電子顕微鏡装置に、その場加熱を可能にする赤外線加熱装置を付加した。これにより、ボイド形成後一旦大気に取り出すことによる大気暴露の影響をなくした。 2.リング構造発現条件 加熱冷却プロセスに対応したシリコンナノ構造が形成される要因を明らかにするため、プロセス時の雰囲気依存性を調べた。その結果、冷却時の炭素系分子吸着が大きく影響することが判明した。アセトン、プロパノール、アセチレン等のガス導入により、再現性良くリング構造を形成することができた。最適なガス導入量は、各分子の表面付着係数に依存していることが示唆された。炭素系分子吸着が作用する機構として、表面SiC形成による、Siマイグレーションの抑制が考えられる。冷却温度依存性を調べた結果、SiC結合が促進される700~800℃でリング構造が明瞭に形成されることがわかり、表面SiCの形成がリング構造形成に影響していることが裏付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ研究計画通り進展しているが、ボイド発現位置に関する実験の進捗が若干遅れており、これに関し結論を得るまでに至っていない。今後も実験を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
1.基板面方位依存性:Si(100)基板上に形成したボイドの形状は正方形であり、Si(111)基板では六角形となる。したがって用いる基板の面方位によりボイド形状を制御できる。そこでSi(110)基板など他の面方位でのボイド形状を明らかにし、酸化膜厚や加熱条件の依存性についてもデータを蓄積し、その反応機構を探る。 2.シリコンナノ構造形成機構:リング構造の形成要件を、加熱条件、加熱手順、酸化膜厚等の観点から電子顕微鏡により詳細に測定する。基板面方位や酸化膜の成膜方法に対し、リング構造がどのように変化するかについても明らかにする。測定結果に基づき、リング構造の発現機構を究明する。 3.形成機構の理論的解析:これまでに行った測定結果に基づき、ボイド成長に関わる反応素過程を考え原子レベルでの反応モデルを構築、モンテカルロ法による数値解析を行い、シリコンナノ構造の形成機構を明らかにする。 4.シリコンナノ構造の発現機構と制御方法の開発:これまでの成果を基に、リング構造の位置、間隔、リング高さ、形状等を制御し、同一基板上に制御された多数のシリコンナノ構造を形成する技術を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整理等の研究補助が想定より少なく、謝金が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
国内研究発表のための旅費として追加する。
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