研究課題
無酸素雰囲気中でシリコン酸化膜を加熱すると、酸化膜が不均一に熱分解脱離し、酸化膜にボイドと呼ばれる貫通穴が形成されることが知られている。さらに本申請者により、ボイド形状がシリコン基板の面方位を反映すること、ボイド内部には加熱冷却プロセスに対応したシリコンナノ構造が形成されること、初期ボイドの発生は加熱開始直後に発生することなどが明らかになっている。本研究は、これまでの研究成果を踏まえ、初期ボイド発生やシリコンナノ構造形成の物理的起源や発現機構を究明し、さらに量子効果半導体デバイスとして発展可能なシリコンナノ構造形成・制御のための基礎的な技術開発を目的とする。以下に、当該年度に得られた研究成果をまとめる。1.酸化膜脱離反応過程の解析加熱冷却サイクルによる、ボイド内部のリング構造形成を活用し、酸化膜脱離反応素過程を解明する上で重要な知見である、熱脱離活性化エネルギーを厳密に測定した。さらに、アレニウスの式における頻度因子の酸化膜厚依存性も明らかにした。これにより、酸化膜の熱脱離反応は、ボイド周辺部で生ずる還元反応が律速反応であること、10nm以上の膜厚の酸化膜における脱離反応においても、ボイド側壁へのシリコン原子の拡散により、薄膜酸化膜と同様な素過程により反応が進行することを明らかにした。2.初期ボイド発生位置の制御シリコンナノ構造形成位置を制御するためには、初期ボイド位置の制御が必要である。そのため、電子線照射による還元反応を利用して微小シリコン領域を形成させ、その後熱脱離させることにより、所望の位置でナノ構造を形成できるのではないかと考えた。実験を行った結果、5-30keVの電子線照射により還元反応を確認した。さらにシリコン微小領域形成の詳細を明らかにするため、実験推進中である。
2: おおむね順調に進展している
初期ボイド形成位置制御に関し、大きな進展が得られ、研究目的達成に向け、順調に進展している。
1.電子線照射による還元反応:電子線照射により酸化膜の還元反応が生ずることは明らかになったが、その詳細はいまだ不明である。電子線エネルギーや照射時間をパラメータとして、還元反応を定量的に解明する。2.シリコン微小領域形成後のボイド生成:還元反応により形成したシリコン微小領域が、初期ボイド生成のきっかけとなるように、熱脱離条件を探索し初期ボイド発現位置制御を実現させる。3.形成機構の理論的解析:これまでに行った測定結果に基づき、ボイド成長に関わる反応素過程を考え原子レベルでの反応モデルを構築、モンテカルロ法による数値解析を行い、シリコンナノ構造の形成機構を明らかにする。4.シリコンナノ構造の発現機構と制御方法の開発:これまでの成果を基に、リング構造の位置、間隔、リング高さ、形状等を制御し、同一基板上に制御された多数のシリコンナノ構造を形成する技術を開発する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
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